ぼくは周防。
ほんとうの名前はすおうなのにみんなからはすぼうと呼ばれちゃっているんだ。
でも隣家のありくんだけはちゃんとぼくの目を見てすおうくん、と呼んでくれる。
ありくんはぼくよりも5つ年上でよく一緒にかわいい女の子をいじったり、くだらないダジャレを聞いてあげたりしたり、踊ってみたを撮ってあげたりしている。
ある日、ぼくとありくんはぼくの部屋で一緒にベッドに座ってアイスを食べていたんだ。
ありくんの小さくて赤い舌がチロチロ、と青いアイスを這いまわっている。
その舌の軌道を見ているとなんだか変な気持ちになってきたんだ。気がつくと、ぼくのアイスが今にも溶けて棒から滑り落ちそうになって慌てて口で受け止めた。
「ありくん、お願いだから溶けたアイスを入れるお皿もってきて!」
「あ、いいっすよ(激寒ギャグ)」
ありくんがお皿を取りに行っている間、ぼくはずっとありくんの真っ赤な舌のことを考えていた。
すると、どんどん心臓がどきどきしてきた。
「おまたせ!このお皿しかなかったけどいいかな?」
ありくんが持ってきてくれたお皿にアイスを入れて一息つくと、思い切ってこう言ってみた。
「ありくん!おねがい!ありくんの舌を見せて!」
「人の舌なんて見ても何も面白くないですよ〜」
ありくんは苦笑いしながらほんのりとアイスの青色に染まった舌をぺろっと出してくれた。
その瞬間、ぼくのなかで何かが爆発した。
次の瞬間、ぼくはありくんの舌をくわえていた。
「す、すおうくん⁉」とでも言いたそうな顔をしてありくんは目をぱちくりしている。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ。
ありくんの舌は温かくて、優しくて、そして少しだけアイスの味がした。
「ごめん、ありくん…」
ぼくはうなだれながらそう謝った。
「大丈夫ですよ〜お気になさらず〜」
さっきまで舌をくわえられていたことなんてなかったかのようにありくんは飄々としてそう答えた。
ああ。やっぱりぼくはありくんが好きなんだ。
夕陽がありくんの顔を、舌を、オレンジ色に照らすのを見て周防はそう思った。