「受け取られないだろうと思い、そちらへ送ることに致しました」
 届られた箱の中にはその一文が書かれた紙が添えられていた。その一月前には貸金庫へ導く招待文が届けられた。
数日前のことである。冬の街灯の照らす朧な夜道を二の腕を抱いて足早に歩いた。
その一度目の時に届けられた小箱の中にスタンガンが入っていた。それを今鞄の中に入れている。不自然な人の気配がした。人気のないいつもの慣れた通りである。
「心もとないことです。そのような物を懐に忍ばせた所で」不穏当の滲む文面に変わっていた。挨拶を済ませるだけの催し場を後にした帰り路であった。
 
 次の届け物の箱の中にはしかし三発の弾丸が入っていた。一般に使用頻度の高い9ミリパラベラム弾である。
「むしろ驚くこともないことでしょうか?」その時、突然に何かを思い出す心境に見舞われた。確かに云われてみると・・。動機に似た妙な気分を催した。
 ドーベルマンという犬だろうか?前方の薄暗がりに混じりその大型犬は両目だけを光らせ、首筋を伸ばし彼女を見据えて動かなかった。
その時、無意識を顔に塗り付けたリリーに表情はなく、やわら鞄に右手を差し込んだ時、夜の暗がりに溶け込むようにその大型犬が消えた。