綾乃さんが亡くなった日、救急搬送されたとの連絡を受けて仕事場から病院に駆けつけた時には綾乃さんは既に亡くなっていた。半裸にタオルをかけられただけの姿で、ぽつんと横たえられ、目、鼻、耳、口からは血があふれ出し、顔面血まみれのまま放置されていた。朝には元気だった妻がこの世を去って3ヵ月。今でも思い出すと涙ぐむ英治さんが重い口を開いた。

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 大阪医科薬科大学法医学教室の鈴木廣一名誉教授は、大阪府警から解剖を依頼された遺体にメスを入れ、思わず目を見張った。府内に住む61歳(当時)の男性、Aさんである。

 心臓と肺をつなぐ太い動脈を切り離したときのことだった。血管から流れ出てきたのは、ドロリとした血の塊―血栓だ。男性の肺動脈には、コーヒーゼリーのような赤茶色の血栓がびっしりと詰まっていた。

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