今回逮捕されたのは、「教材を無断コピーして転売した」というまさに、著作権違反の一丁目一番地の話。
ソフトを違法コピーして転売したり、市販の書籍をコピーして転売すれば著作権侵害に当たる。

問題は自分が対価を払って入手した「教材」を転売することの違法性だが、「入手した教材」の転売行為は著作権侵害とは関係ない。
映画の著作物を別にすれば、市販の書籍やゲームソフトの転売自体は著作権侵害と何ら関係ない。

ただ、塾は教材が転売されると収益(塾生獲得)機会を失ってしまう。
だから、入塾時の誓約書などで転売禁止条項を入れるのだろう。これは著作権とは無関係の条項(売買特約条項など)と考えられ
る。

入塾時に誓約書にサインをして入塾したということは、その転売禁止条項(法的には売買特約条項にあたると思われる
)に合意したということ。
なので、サピ在籍中に誓約書等に記載された事項に違反すれば、サピから契約違反を理由に
契約解除の通知(退塾勧告)がなされるリスクはあろう。
(もちろん、「契約解除の法的有効性を争う」という選択肢もあるが、そもそもそういう事態になれば、現実問題として子供は塾にいられないだろう。)

一方、既にサピックスを退塾していたり、中学受験を終えた後、その契約特約は及ばないと考えられるから
例えば、中学受験終了後に使用教材をオークションで売る行為について、違法性を追求するのは難しいだろう。

ただ、塾等も手をこまねいてばかりでは収益機会が逸することになるので、誓約書の条項に盛り込んだり、警告を発したり、教材に転売禁止等の文字を入れることで、転売等が極力発生しないような企業努力をしている。実際、転売禁止と書いてある教材をオークションで出品する方もそれを落札する方も
「転売禁止」等の文字を目にするわけで、売買しようとしている当事者も「これは法律に抵触するかも」という疑念や良心の呵責が生じる。

こうした心理効果は実は大きく、教材を転売しない「良心的な人たち」が大多数ではある。