「敗走千里」読んでみた。
結論を先に言えば、これはただの戦争小説であり、資料としての価値はゼロだ。
先ず、著者は支那奥地の親元を離れ子供の頃から日本の学校で勉強し、
大学卒業半年前に一時のつもりで帰国した時、兵隊にとられたという。
日本での居留先も大学も全く記述がない。そして部隊が駐留していた場所も年月日も全く書かれていない。
そして日本に原稿を送った後は連絡がとれていないと言う。読み進むにつれ、作り話の印象が強くなる。
著者の親しい中隊長は日本陸士卒、そして前線の部隊を監視し督戦を指揮する政治将校は米国陸士卒、と話が出来過ぎだ。
そしてこの中隊長と政治将校が慰労隊の一女性を巡って争う話も長々しく実につまらない。
戦闘も凄惨な印象は全く受けない。
またレーダーもない当時の爆撃機が夜間に爆撃するなんてあり得ない。
督戦隊による死体の山も小説の終わりでホンのチョット書かれているだけ。凄惨さを感じさせないね。
これは日本人が空想して書いた安っぽい小説と思われ、こんなものをGHQが発禁処分にしたとは思われない。