経営危機の東芝が、半導体子会社「東芝メモリ」を売却する計画が暗礁に乗り上げつつある。優先交渉先の「日米韓連合」で、韓国企業が議決権まで要求し始め、技術流出懸念が強まったためだ。

 候補から消えたはずの台湾や米国企業とも交渉することになり、決着はさらに遠のきそうだ。

 東芝は、三井住友銀行など主力取引行を集めた会合で、東芝メモリの売却先として日米韓連合に加え、三重県四日市市の工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業とも協議すると明らかにした。

 日米韓連合は、官民ファンドの産業革新機構や米ファンドのベインキャピタル、韓国半導体大手のSKハイニックスが参画するなど経済産業省主導で結成された。

 独占禁止法の審査の長期化を避けることや技術流出を防ぐ狙いから、同業のSKハイニックスは出資ではなく融資で参画するとしていたが、そんな都合のいい話があるはずもなく、SKは議決権を要求、ベインキャピタルから株を買い取り、事実上東芝メモリを乗っ取るとの観測も浮上した。

 SKは、東芝から不正に半導体の研究データを入手したとして訴訟になり、約330億円の和解金を支払ったこともある。技術流出防止が目的のはずの経産省主導の連合にSKが突如加わった経緯も不透明だ。

 ただ、他の陣営も一筋縄ではいかない。

 米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などと連合を組むWDと東芝は複数の訴訟を抱えている。米西部カリフォルニア州の裁判所は11日(日本時間12日)、WDが製品開発の機密情報に接触できないよう通信を遮断した措置の解除を東芝に命じた。

 WDはカリフォルニア州の裁判所に東芝メモリの売却差し止めも求めており、14日(同15日)に審問が行われる。

 米アップルと組んでいる鴻海に売却しても技術流出は避けられない。

 市場では「稼ぎ頭の半導体事業を売却する東芝の再建計画が間違っているのではないか」(電機担当アナリスト)というそもそも論すら出始めた。

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東芝の技術が韓国のSKに奪われたら、日本の半導体産業は赤信号だ
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韓国のSK(ロイター)