【ワシントン=黒瀬悦成】米国での中国海洋戦略研究の第一人者である、米政策研究機関「戦略予算評価センター」のトシ・ヨシハラ上級研究員が産経新聞のインタビューに応じた。ヨシハラ氏は、中国による南シナ海の一方的な領有権の主張と軍事拠点化は「米国が主導する現在の自由主義的な国際秩序への挑戦だ」と指摘し、日本などの同盟国や、フィリピン、ベトナムなどの南シナ海に面した「前線国家」との連携強化の重要性を強調した。

 中国は、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島にあるファイアリークロス(永暑)礁、ミスチーフ(美済)礁、スービ(渚碧)礁の3大人工島の軍事拠点化をほぼ完了させた。

 ヨシハラ氏は「中国がこれらの人工島に対艦・対空ミサイルを配備すれば、中国本土や海南島などの長距離火力とも連動した『接近阻止・領域拒否』(A2/AD)の強固な防衛網を南シナ海一帯に確立することになる」と警告した。

 また、米中が南シナ海で軍事衝突するのは、より大きな規模で米中が紛争に突入した場合だと指摘。その上で、例えば台湾海峡有事で米中が衝突し、米艦隊が南シナ海を通航する必要に迫られた場合、「米海軍は台湾周辺での中国との戦闘に加え、南シナ海での中国軍事拠点の無力化という追加の作戦上の負担を強いられることになる」とした。

その上でヨシハラ氏は、西太平洋での一連の安全保障環境の変化に対応するには「通常戦力で中国に対して優位を維持する必要がある」と強調。「力による平和」を提唱するトランプ大統領による「米海軍を350隻体制にする」などの海軍力強化に向けた政策を支持する考えを示した。

 さらに、歴代の米政権は米中関係の円滑化を図るため南シナ海問題を他の懸案から「区分化」させる傾向にあったことが現在の事態を招いたとの考えを示し、「台湾やチベット、人権、貿易など、中国が挑まれるのを避けたがる問題を南シナ海問題とリンクさせて中国に圧力をかけるべきだ」と強調した。

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 トシ・ヨシハラ氏 米タフツ大で博士号を取得。海軍大学教授として10年以上にわたり戦略論を教えた。専門はアジア太平洋の安全保障、中国の海洋戦略。2010年に発表した著書「太平洋の赤い星 中国の台頭と海洋覇権への野望」は米海軍トップの作戦部長による幹部向けの指定図書になった。日系米国人。



http://www.sankei.com/world/news/170716/wor1707160028-n1.html
2017.7.16 20:22
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