「借金で成長率を高めるというやり方じゃないですか。朴槿恵(パク・クンヘ)政権と文在寅(ムン・ジェイン)政権は、結局同じことをやっているんですよ」

 経済部処(日本の省庁に相当)の高官を務め、大学で教壇に立った人物に出会ったところ「負債主導成長論」という言葉を口にした。借金を成長のための起爆剤にするという点で、現政権と前政権が同じ路線をたどっているというのだ。「借金をする主体が変わっただけだ」と言った。

 朴槿恵政権は、金利を引き下げることで貸し出し規制を解き、家計負債を増やした。そうして不動産景気をあおった。現政権は、国の金で公務員を増やしていろいろな手当を付け、所得を高めれば、成長することができると説く。

 家計負債の増加にようやく歯止めが掛かったかと思ったら、今度は国の借金が増えるのを見守らなければならない状況となった。票を意識するあまり増税には及び腰で、国債を発行することなくしては耐え忍ぶ道がない。

 成長の足場となる財源をどこから引っ張ってくるかが大きな焦点となる中、経済活動の障害となるものを取り除こうという論議は知らない間に消滅してしまった。前政権は、効果が大きかったと見るにはやや無理があるものの、規制緩和を並行して行おうと努力した。

 女性の大統領が「規制とは打ち破らなければならない障害の塊」と言いながら、荒々しい言葉を使っては規制撤廃へ向け意欲を燃やした。しかし、新政権が発足して以降は天文学的な規模の国家予算をばらまくという青写真だけが何枚も示されるだけで、民間の活力を高めようといった論議はほとんど見られない。

 前政権のにおいが絶えないとの理由から、企業家たちの問題を解決する「貿易投資振興会議」もこっそりと中断してしまった。地域別に特化された産業規制をなくすという規制フリーゾーン法も事実上廃棄された。

 世界の主要国は、規制解除を働き口の創出のための手段として活用している。借金を主な材料とする韓国式の処方箋を使う国など存在しないと言っても過言でない。

 お隣の中国や日本では遠隔診療が行われ、ほとんど全ての薬品を注文し、宅配で受け取ることができる。韓国では規制によって乗り出すことさえできない分野だ。ほとんどの秀才が医大に入るにもかかわらず、医療の産業化はいまだに程遠い。

 日本では、コンビニ業者の「ローソン」が農業を行い、中国ではスマートホンメーカーの「シャオミ」が花卉(かき)業に進出したというが、韓国では夢のまた夢だ。中国と日本があふれるような働き口を創出している分野で、韓国は規制に阻まれ身動きが取れずにいる。

 ある大企業の役員は「条件さえ整えば大金を投入する準備はあるが、規制が昔のままである上、政府が出てきて金を使うというから、企業の立場としてはいったん見守ろうということになる」と話す。

 国の財政で公務員を増やすという「働き口の人工創出計画」は、水が足りないから樹木の幹に含まれている水分を取ってきて根にやる、というのと一体何が違うのか。取りあえず1、2回は行ってみるのもいいだろう。

 しかし、新しい水路を掘って順調に水を供給できなければ、結局樹木は枯れて死んでしまう。借金をして金をばらまくのはせいぜい成長の触媒材にすぎないのであって、根本的なエネルギー源にはなり得ない。

 働き口がこぼれ出る強固な成長を成し遂げるためには、経済活動を妨げる規制という障壁を撤廃していかなければならない。借金で城を築けば、いつかは崩壊するほかないのだ。

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孫振碩(ソン・ジンソク)経済部記者

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