>>1の続き)

−−まずは相手の懐の中に入るということか

「拉致問題に関しても、融和路線でも強硬路線でも、どっちをやってもうまくいっていない気がします。それこそ小泉さんが努力されたように平壌宣言に戻って交渉をする、そして日朝国交正常化ができたらそこで北朝鮮との対話というものが、関係が密になるわけですから。

そこで拉致問題はどうなっているんだと。われわれだって向こうに行けるわけですから。ただ、今のような状況だと、こちらから十分調査できる状況ではない。私は厳しい戦略をとることよりも、むしろ心を開いて、中に入って、実を取ることの方が正しい考え方ではないかと思っています」

−−北朝鮮に対するトランプ米政権の見方についてはどう考えるか

「トランプさんの言っている『あらゆる選択肢』について、多くのメディアでは、金正恩朝鮮労働党委員長の体制に壊滅的に打撃を与えるものだ、ととらえています。ですが、必要に応じて対話に応じるというメッセージもあるわけでしょう。

あらゆる可能性というのをどちらに取るかでだいぶ変わるんですが、私は両方あるということを、あえて暗示しているのがトランプ大統領の発言ではないかと思います」

「私も最近トランプさんにならって、ツイッターを始めたんですよ。でもツイッターで政治を動かすというのは好きじゃありませんし、望ましいやり方ではないと思いますよ。だいたいツイッターって北朝鮮に届かないんじゃないかと思います」

−−トランプ大統領は金正恩氏を「やり手だ」と認める発言もしている

「そうかもしれませんね。オバマ政権からトランプ政権になって北朝鮮問題がどっちに転ぶかということはあるけど。

彼はビジネスマンですから、それこそディール(取引)で解決をしようというやり方で攻めていく可能性もあると思ったら、一気に和の方向で結論を出そうということもあり得るんじゃないか。可能性は私は前より増えたと思いますね」

−−鳩山氏はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の顧問だ。安倍晋三政権のAIIBに対する考えも軟化しているようだ

「私もそう思います。今年6月にも韓国南部の済州島で開かれたAIIB総会に出席して、金立群総裁にお会いしました。金総裁は二階俊博自民党幹事長が中国の現代版シルクロード経済圏構想『一帯一路』総会に出席したことを評価していました。

一方で麻生太郎財務相兼副総理はAIIBに非常に否定的な考え方をしている。金総裁は私に『いったい日本はどっちなんだ。二階さんは遅くならないうちに入った方がいいと言っている。でも財務相は全然違うことを言っているじゃないか。どうなんだ』と」

「金総裁は『しばらく様子を見ます。自分の方から入ってくれとは言いません。もし入りたいと結論を出したときには、当然ドアは開いていますから、参加をしていただくことはありがたいことだ』と。参加してほしいと思っているんですよね。

日本のAIIB参加は、日中関係だけではなくて、世界の平和と安定のために大変重要だと思います。金総裁は日本のアジア開発銀行(ADB)などでの経験、ノウハウを知りたいわけです」

「もう一つ、金総裁が話したのが、『安倍首相は条件が満たされたら、一帯一路に協力すると言っているが、どういうことか。今まで参加した80何カ国は条件をつけないで参加しているから、日本だけが条件をつけるというのは自分が決めるわけにはいかない。

80カ国が認めるかどうかだが、それは難しい話だ。ガバナンス(組織統治)に条件をつけられるのは困る』と。そこは『日本として十分AIIBにガバナンスがあるか自分で判断してもらいたい』とも言われました。本当は安倍政権に伝えたいんですが、チャンスがなくて…。ぜひ伝えていただきたい(笑)」

《アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中国が主導して2014年に設立した国際金融機関で、アジアを中心に鉄道や道路などのインフラ整備に資金を支援する。本部は北京。資本金1000億ドル(約11兆円)のうち、中国が3割を出資し、融資案件への拒否権を単独で握る。
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国やインド、韓国のほか、ドイツや英国などもメンバーに連なっている》

−−安倍政権は、これまで中国を安全保障と経済両面で仮想敵とみていたところはあるが、この半年で変わりつつある

(続く)