日本で開発されたイチゴ品種が海外に流出、無断栽培されるケースが相次いでいる。韓国では、日本の品種を基に新品種も開発され、アジア各国へ輸出を活発化させているという。

 農林水産省は日本の輸出機会が失われたことによる経済的損失を5年間で最大220億円と試算。いったい、どうなっているのか。

 韓国への品種流出が明らかになっているイチゴは、「とちおとめ」「レッドパール」「章姫(あきひめ)」など国内でも人気の高いブランド。

 農水省によると、栃木県が開発した「とちおとめ」は、韓国で無断生産された上に“逆輸入”され、東京都中央卸売市場に入荷されていたことが判明した。

 個人育種家が開発した「レッドパール」「章姫」は韓国国内の一部生産者に利用許諾をしていたが、何らかの経緯で苗などが第三者に流出して無断で増殖されたとみられる。

 韓国では日本の品種を用いた品種開発も相次いでおり、これまで、レッドパール・章姫を交配した「雪香(ソルヒャン)」、章姫・とちおとめを交配した「錦香(クムヒャン)」などが誕生。こうしたイチゴはすでに韓国で品種登録が行われているという。

 一方、海外で無断栽培が発覚しても、その国で品種登録がされていなければ生産を差し止めることは難しいのが実態だ。問題が明るみに出た頃には出願登録できる期間がすでに過ぎていて、泣き寝入りを強いられるケースも少なくない。

 静岡県が開発、2002年に国内で品種登録したイチゴ「紅ほっぺ」もそうしたケースの一つ。紅ほっぺは「中国で無断栽培されている」との情報があるが、中国では品種登録を行っておらず、苗の回収や廃棄、栽培の差し止めなどの対抗措置を講じることができない状況だ。

 すでに、中国で品種登録できる期間も過ぎてしまっており、「現状としては打つ手がない」と静岡県の担当者は明かす。

 無断栽培の被害はイチゴだけではない。農業・食品産業技術総合研究機構が開発し、06年に国内で品種登録されたブドウ「シャインマスカット」も中国で無断増殖が確認された頃には、中国で出願できる期間は過ぎていた。

 海外での品種登録は、1件当たり100万〜200万円程度かかり、手続きも煩雑とされる。そのため、これまで、開発者らが申請に及び腰になるケースもあったといわれる。

 農水省はこうした状況を変えようと、日本で新たに品種を開発した農家や自治体などに海外での品種登録を支援する事業に着手。出願にかかる経費を補助するほか、海外出願にかかる手引書を作るなどしている。

 「海外への流出防止を実効的に行うには、品種が開発されてから速やかに無断栽培などが行われる可能性の大きい国、主な輸出先国の双方で登録することが重要だ」

 農水省の担当者は、そう力を込めている。(M)

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170804/soc1708040019-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170804/soc1708040019-n2.html