一瞬にして世界が変わった。

 先月末、北朝鮮がミサイルを発射。約1000キロを飛翔したミサイルは、奥尻島沖合のわが国EEZ(排他的経済水域)内に落下。この模様は北海道から肉眼で見ることができた。つまり、それほど本土近くに落ちたということだ。

 前回より飛翔時間、最高高度が上がったミサイルは射程距離を9000〜1万キロに伸ばし、米本土攻撃能力も備えたと見られる。どこから見てもICBM(大陸間弾道弾)の完成であり、世界は北朝鮮を<核攻撃能力のある国>と認識した。

 これにドナルド・トランプ大統領(71)の米国は「戦争も辞さない」といきり立っているが、電撃的に米朝首脳会談を狙うとの噂もある(注1)。いかなる手段を取ってでも自国への攻撃を避けるリアリズム外交は、国際社会の常識だろう。そして、どう転んでも安全保障上、大きな苦悩に苛まれるのが日本なのだ。

 「戦争になろうと、米朝が日本の頭越しに握手しようと、このままの緊張状態が続こうと、日本の安全保障は危機が増大する。第二次大戦後、最悪の状態といってもいい」(軍事ジャーナリスト)

 まさに政官民が一体となって、国難にあたるべき時だ。

 そんな中、国会やメディアが何をやっているかというと……。

 「加計がー、日報がー、安倍がー、支持率がー」と、相も変わらず。

■北朝鮮より異常な国ニッポンの惨状

 「いま石川県では、EEZ内で操業するイカ釣り漁船が北朝鮮のものと思われる大量の不審船によって安全を脅かされ、(漁獲を)ガバーッと持っていかれる事件が多発している。しかし近くのロシアや韓国の海域では起こらない。拿捕しないから、舐められている。国益に関わる事件が起こっているときに、こんな(日報)問題を(テレビで)やっているんですか!?」

 ミサイル発射の数時間前に馳浩元文科大臣(注2・56)が『バイキング』(フジテレビ系)に出演。いわゆる日報問題にコメントを求められ、怒りを込めて言い放ったセリフだ。予定外だったようで、司会の坂上忍(50)は無反応。「それにしても稲田さんは〜」と<こんな問題>の話を続けていた。

 わが国のマスコミ、特にテレビメディアに於いては、北朝鮮による主権侵害はまるで無かったかのような扱いだ。あるいは報じたとしても、そこに批判や怒りは無い。また政界においても民進党などは、北朝鮮の悪事すらも「安倍政権のせい」と言わんばかり。

 これも同日だったが、そこに司法までもが加わった。

 大阪地裁の西田隆裕裁判長は、国が朝鮮学校を高校無償化の対象から外したことを<違法>とする判決を出した。各地の朝鮮学校が同時に起こした訴訟の判決としては2例目で、<適法>と認めた広島地裁の判断とは真逆となった。

 そもそも朝鮮学校が北朝鮮本国、その出先機関である朝鮮総連の強い影響下にあることは、公安調査庁も指摘する明確な事実。つまり日本を敵視し、日本の主権を侵し、あまつさえミサイルで脅してくる国に税金をくれてやろうという判決(注3)だった。まるで喉元にナイフを突きつけてきた相手のポケットに、札束をねじこんでやるような……。

 ──1日の間に起こった北朝鮮関連の3つのニュースから、いま日本が置かれた異常な状況が浮かび上がる。自らの身を守ることさえ許されないのなら、それこそ憲法違反だ。野党、メディア、裁判官その他の人間たちが、危機に際してどんな行動を取ったのか? 記憶しておきたい。

(注1)米朝の対話…トランプ政権のティラーソン国務長官が、可能性を匂わせている。
(注2)馳浩…この2日前に、11年ぶりにプロレスに復帰して試合をした。
(注3)判決…「教育の機会均等」を守るべき、というが在日朝鮮人の子弟は日本の学校には問題なく入学できる。彼らの中には、望まないのに周囲の圧力で朝鮮学校へ入らされるケースもある。

著者プロフィール
田中ねぃ コンテンツプロデューサー
東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。

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