北朝鮮による弾道ミサイル発射が相次ぐなど、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、海上自衛隊の艦船や航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの公開が各地で相次いでいる。

 自衛隊の活動に理解を深めてもらうとともに、有事の際の即応態勢を示し、国民の不安を払拭する狙いもある。西日本での最近の公開事例を紹介する。

「かが」

 海自最大のヘリコプター搭載護衛艦「かが」(全長248メートル、排水量1万9500トン)が7月11日、京都府舞鶴市の海自北吸岸壁に寄港した。

 艦首から艦尾まで平らな飛行甲板(長さ245メートル、幅38メートル)を備え、哨戒ヘリ5機が同時に発着艦できる。哨戒ヘリ7機、救難・輸送ヘリ2機の計9機の搭載・運用が可能。新型輸送機オスプレイの発着も可能で、「ヘリ空母」としての機能を持つ。

 会場では乗組員約250人や関係者約150人が参加して歓迎行事が行われ、その後、関係者らに艦内が公開された。

 「かが」は3月に就役し、呉基地(広島県呉市)の第4護衛隊に配備、舞鶴には初の寄港となった。

 14日には、艦名由来の地の石川県を訪問し、金沢港に寄港。歓迎式典の後、艦長の遠藤昭彦1等海佐は「由来の地に初めて訪れることができ光栄。有事に限らず、災害派遣などさまざまな場面で活躍できるよう日夜、訓練に励んでいる」と述べた。

「いなづま」「さみだれ」

 また海自の護衛艦「いなづま」「さみだれ」の2隻が7月22日、鳥取市の鳥取港に寄港し、一般公開された。

 両艦は、海自の中核を担う汎用(はんよう)護衛艦「むらさめ」型の同型艦。排水量4550トン、長さ151メートル。高性能20ミリ機関砲や62口径76ミリ速射砲などを装備する。いずれも平成12年3月に就役し、呉基地に所属する。

 「いなづま」は7月8、9日も、松山市の松山港コンテナターミナルで一般公開。訪れた人は艦内や装備品などを見学し、制服姿での記念撮影なども行った。

「ひゅうが」「ふゆづき」「さわぎり」

 舞鶴市の海自北吸岸壁では7月29日にも海自の「舞鶴地方隊サマーフェスタ」が開かれ、護衛艦「ひゅうが」「ふゆづき」の2隻が公開された。

 舞鶴音楽隊の演奏、タグボートや小型高速艇による港めぐりなど多彩な催しがあり、舞鶴商工会議所の「まいづる海自カレー」プロジェクトとして、艦艇や部隊のレシピで作ったカレーも販売、1万人以上の人でにぎわった。

 7月下旬に和歌山県の新宮港で、海自の護衛艦「さわぎり」も一般公開。平成2年に就役し、現在は第2護衛隊に所属、長崎・佐世保を母港にする。76ミリ速射砲や対潜魚雷「アスロック装置」、対艦ミサイルをはじめ、対潜ヘリコプター「SH−60J」を搭載している。

PAC3

 弾道ミサイルを迎撃する陸PAC3も各地で公開、展示されており、6月26日には陸上自衛隊北熊本駐屯地でPAC3の機動展開訓練が報道陣に公開された。

 PAC3は、海自のイージス艦に搭載された海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が撃ち漏らした弾道ミサイルを、着弾前に狙うシステム。

 訓練は航空自衛隊芦屋基地(福岡県芦屋町)にある第2高射群第6高射隊が実施。レーダー装置など装備品を搭載した車両約10台が駐屯地に入り、訓練用ミサイルを載せた発射機を運び込んで、射撃管制装置などの車両を電源車とつなぐ手順を確認した。

 第2高射群副司令の内山尚則2等空佐は「PAC3は、弾道ミサイルから国民を守る最後の手段だ」と語った。

 また6月24日に津市の三重県総合文化センターで開かれた自衛隊のイベントでは、白山分屯基地(同市)に配備されているPAC3が展示された。北朝鮮によるミサイル発射が相次ぐ中、一般の来場者は隊員に機能や配備状況などを熱心に質問していた。

http://www.sankei.com/west/news/171201/wst1712010009-n1.html

http://www.sankei.com/images/news/171201/wst1712010009-p1.jpg
金沢港に寄港した海自最大のヘリコプター搭載型護衛艦「かが」=7月14日、金沢市
http://www.sankei.com/images/news/171201/wst1712010009-p2.jpg
就役時の「かが」=3月22日、横浜市