「都民ファーストの会」が圧勝した7月の東京都議会選挙の結果に大きく揺れているのは、歴史的な大敗を喫した与党・自民党だけではない。

またしても安倍政権に対する批判票の受け皿になれなかった「野党第一党」の民進党では、都議選直後から蓮舫代表の「二重国籍問題」が蒸し返され、ついに蓮舫氏が代表を辞任。その後も細野豪志氏が離党を表明するなど、この期に及んで「内紛」を繰り返す民進党に有権者の視線は冷たい。

蓮舫氏をめぐる問題や、日本社会の「二重国籍」に対する姿勢は外国人ジャーナリストの目にはどう映るのか? そしてなぜ民進党はこの状況でも有権者からの厳しい視線に正面から向き合うことなく、身内の「国籍問題」による足の引っ張り合いで醜態を晒(さら)してしまうのか?

「週プレ外国人記者クラブ」第87回は、日本に長く暮らし、日本人の妻を持つアイルランド人ジャーナリスト、デイヴィッド・マクニール氏に話を聞いた――。

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─東京都議選が終わるや否や、民進党では蓮舫代表の「二重国籍問題」が蒸し返され、大きな話題になりました。「二重国籍」をめぐる一連の議論をどのように見ていましたか?

マクニール そもそも、日本には国会議員の資格に関して「二重国籍者」を禁ずるという明確な規定はありませんから、明らかな「違法」だとは言い難い。

また、私は個人的に蓮舫氏が日本人として、日本のために政治家になったと信じていますから、仮にいくつかの手続き上の問題があったとしても、それは本質的に「大きな問題」ではないと思っています。

しかし、一般の人とは違い、国会議員などの政治家に「二重国籍」を認めるかどうかというのは非常に難しい問題です。

また昨年来、国籍問題に関する蓮舫氏の説明が二転三転するなど、この問題に関する彼女の対応の仕方に問題がなかったわけではないし、それが「嘘をついていた」とか「不正確な説明をしていた」と見なされれば、それによって日本の有権者の信頼を失う可能性はあるし、その点では彼女にも一定の責任があると思います。

個人的に、彼女が民進党の代表を辞めた直接の理由がこの「二重国籍問題」だとは思いませんが、これが民進党内の権力争いに利用され、一定の影響があったのは事実で、それは彼女だけでなく党にとっても非常に残念なことだと思います。

ちなみに、蓮舫氏は母親が日本人、父親が台湾人ですが、彼女が生まれた1967年(昭和42年)時点の日本の国籍法は「父系主義」を採っていたため、基本的に父親が日本国籍を持つ子供にだけ日本国籍の取得が認められていました。(※蓮舫氏は85年の国籍法改正に伴う「経過措置」の対象として日本国籍を取得)。

逆に母ではなく「父親」が日本人ならば、自動的に日本国籍が付与されていたはずです。

─この問題に関する一連の反応は、日本の「国籍制度」に関する問題や日本人の「国籍観」を反映しているようにも感じます。

マクニール そうですね。蓮舫氏の「二重国籍問題」に対する日本社会の反応を見ていると、日本の社会には依然として強い「同一性」への志向というか、「純粋な日本人」という考え方に対する強い思い入れが存在していて、それが一連の議論にも少なからず影響しているように思います。

ですから、仮に正当な日本国籍を持つ「日本人」であったとしても「他の国のルーツを持つ人」に対する“区別“のような感覚は存在する。もちろん、それは多くの場合“差別”や“嫌悪”ではないのですが、「純粋な日本人ではない」という点に、なんらかのこだわりを持つ人が未だに少なくないのは事実だと思います。

http://news.livedoor.com/article/detail/13455392/

>>2以降に続く)