実際の作戦計画を基に描く

 韓国では「左派政権」が誕生し、保守勢力の瓦解(がかい)に乗じて左派による“保守潰(つぶ)し”が始まっている。朝鮮日報社が出す総合月刊誌「月刊朝鮮」(8月号)では「激動する韓半島」の特集を組んで、“大韓民国崩壊”のシナリオを載せた。

 左派政権はいずれ北朝鮮軍を引き入れるだろうという予測の上に、その前段階で在韓米軍や日本人をはじめとする駐在外国人の“脱出”が始まる。韓国民は何が起こっているのか分からず、やがてパニックになる、という近未来小説のようなシナリオだ。

 保守陣営を代表する朝鮮日報社らしい企画ではあるが、これを単なるフィクションだと片付けるにはリアル過ぎる展開に背筋が凍るものがある。

 記事は「左派政権の保守勢力に対する全面的な総攻撃が始まった」で始まる。危機感が半端ない。

 「大韓民国を支えてきた三つの軸である企業(財閥)、保守政党、正統保守メディアへの揺さぶりが本格化している。これは左派内部の首脳が以前から『永久政権』のためのプランとして準備してきたものだ」という。

 北朝鮮のミサイル挑発に対して、米中をはじめとする国際社会は強硬姿勢で臨んでいる。その中で、ひとり「対話」の幻想を抱いているのが文在寅政権だ。

 北朝鮮の弾道ミサイルを防ぐための、言ってみれば、大韓民国の生存を懸けた防衛システムである「サード(高高度防衛ミサイル)」配備についてさえ、搬入路を「市民」が塞(ふさ)いで妨害する。まるで「沖縄」から学んだ手法のようだ。

 最初の記事を担当した趙甲済(チョカプチェ)元月刊朝鮮編集長(現趙甲済ドットコム主宰)がとんでもないエピソードを明かす。

 「米上院議員として情報委員会で長く活動し、韓半島事情に明るい要人が、私席で韓国人の知人に冗談半分本気半分で、『あなたは北朝鮮の兄弟が誇らしくないですか?』と問うたという。

 北朝鮮労働党は道徳的には悪魔だが、少なくとも権力の論理が支配する政治では尊敬に値する点があるのではないか? という質問だった」

 北朝鮮は世界中からの反対や阻止措置にもかかわらず、既に「核保有国」として認めざるを得ない段階に来ている。

 趙氏は、「7月初めのICBM(大陸間弾道ミサイル)発射以後、米国では北朝鮮爆撃論が退潮して、交渉論が力を増している。韓米軍の戦略部署では何度も合同会議を開き、北朝鮮の核能力を軍事力で無力化させる案を検討したが、結論は『難しい』だった」と紹介する。

 手をこまねいているうちに、北朝鮮は本当に核戦力を手中にするだろう。

 前国防部報道官の金●(=王に民)●(=大の両脇に百)(キムミンソク)博士は、「北朝鮮の核能力を排除できる時間はノドン核ミサイルが実戦配備される前、すなわち今年中で、この時限を逃せば、北朝鮮の核疾走を阻止できず、結局は多様な種類の核爆弾とICBMを持った核強国になる」と予測した。

 北朝鮮が核ミサイルを発射する兆候を米軍監視装置が捉える。米大統領は「日本と英国の首相に直ちに電話するよう」命じる。日本は既に正確で多くの情報を得ているようで、日本人退避計画を直ちに実施していた。

 「23万人」といわれる在韓米軍家族や米国人はヘリコプターを乗り継いで金海空軍基地に向かい、輸送機で嘉手納へ退避する。または高速鉄道に乗って釜山に逃れ、船舶で日本に渡ることになる。

 グアムのアンダーソン基地からはステルス爆撃機が朝鮮半島の上空に飛来し、北朝鮮の爆撃目標に韓国空軍と共に向かう。金正恩委員長を“除去”する「斬首作戦」を実行するためだ。わずか1時間の爆撃で「北朝鮮の軍事目標物1016カ所」が地上から消える。

 その他の在韓外国人らが仁川空港や金浦空港に殺到し、パニックとなり暴動が起きるが、警備員や韓国警察はなすすべもない……。

 現在の左派政権が続けば、こういう状況となる、ということを実際の「作戦計画」や軍事力などを基に描いたものだ。「北が南に(ミサイルを)撃ってくるわけがない」と思っている人々はこのシナリオをどう読むのだろうか。

 編集委員 岩崎 哲

http://vpoint.jp/world/korea/93312.html