【香港=河崎真澄】12日付の香港紙、蘋果日報などによると、香港の政党、民主党の男性党員、林子健氏が、「標準中国語を話す数人の男に香港で監禁されて暴行を受けた」と訴え、波紋を広げている。

 林氏はサッカーのスペイン1部リーグ、バルセロナのメッシ選手から、死去したノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏に宛てたサイン入り写真を預かっており、妻の劉霞さんに届ける予定だった。

 監禁中に劉氏との関係を追及されたといい、林氏は中国公安関係者が監禁と暴行に関与したと主張している。

 香港は「一国二制度」で独自の司法権が法的に保障されているが、2015年に中国本土の禁書を扱う「銅鑼湾書店」関係者の失踪事件が相次ぎ、制度の形骸化と中国当局による越権行為に批判が強まっている。

 林氏は11日に記者会見を開き、香港ではあまり使われない中国本土の標準中国語を話す数人の男に、九竜地区の繁華街で10日夕に車に押し込められ、監禁されて暴行されたと話した。

 監禁先では、「おまえはキリスト教徒だろう」などといわれ、殴られた後、太ももに大型ホチキスを十字架の形にして10カ所に打ち込まれたといい、傷跡を公開した。薬物をかがされて意識を失い、香港郊外の海岸に置き去りにされ、11日未明に気づいたという。

 林氏は、数日前にメッシ選手の写真を劉霞さんに渡さないよう脅迫電話を受けていたことも明かした。林氏が所属する民主党は今回の事件を「銅鑼湾書店事件の再来」と指摘し、香港警察に捜査を求めている。

 香港では、中国広東省広州と直結する高速鉄道の建設で、香港側のターミナル駅に中国側の「司法権」が及ぶ出入境施設を併設する計画が進んでおり、香港の民主派は身柄拘束の懸念が強まると反発している。

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11日の記者会見で、「中国本土の標準中国語を話す数人の男」に監禁され、ホチキスでつけられたという太ももの傷を見せる林子健氏(AP)
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11日、メッシ選手のサイン入り写真を手に、監禁・暴行の被害を訴える林子健氏(AP)