北朝鮮が日本上空を超えて、米領グアム周辺海域に弾道ミサイルを撃ち込む計画を発表し、米朝間の緊張が高まっています。

まず、金正恩(キム・ジョンウン)氏とトランプ大統領が、お互いに厳しい発言を行い、緊張が高まっていることを懸念しています。

特に、圧倒的な力を持つ米国のトランプ大統領が強い言葉を発することは、チキンレースのように、状況がさらに緊張を生み、何らかのきっかけで、武力衝突が発生しないとも限りません。そうなれば、韓国・日本に重大な影響を及ぼす可能性があります。

トランプ大統領には発言の自制を求めなければなりません。日米首脳電話会談で、一定の合意に達したということですが、武力行使につながりかねないようなトランプ大統領の発言について、安倍総理からも強く自制を求めるべきだと思います。

緊張を必要以上に高めないという意味で、日本政府自身の発言も重要です。先日(8月10日)の閉会中審査の中で、小野寺防衛大臣が集団的自衛権の行使について答弁しました。

答弁は、あくまでも一般論を述べたものと考えられますが、この時期の発言は注意深く行わないと、大きな誤解を招く可能性があります。

現に、海外メディアでは、日本が集団的自衛権を行使することに言及したと大きく報じられています。集団的自衛権の行使の前提となる「存立危機事態」の認定は、今回のケースで言えば、米国に対して北朝鮮が武力行使をするということが大前提です。

しかし、現時点で北朝鮮が述べているのは、グアム周辺海域に弾道ミサイルを撃ち込むという計画を発表しただけで、グアムに対して武力行使をすると述べているわけではありません。従って、日本が集団的自衛権の行使をするということにはならないのです。

日本に対しても、基本的には、弾道ミサイルである以上、日本の領空(大気圏内)を通過するのではなくて、そのさらに高い高度、いわば宇宙空間でミサイルが日本の上空を超えるのであり、もちろん発射失敗や事故の可能性など、極めて憂慮する事態ではあるものの、

事故でもない限り、日本の領土・領空・領海が侵されるわけではありません。国民に対して、以上のことを冷静に説明し、過度の不安感を呼ぶことがないようにすることは、政府の重大な責任だと思います。

北朝鮮のミサイルの問題で重要なことは、まずミサイル、そして核開発をストップさせること。そのためには、日米同盟を背景に、韓国や中国ともしっかりと協調し、北朝鮮に圧力をかけることで話し合いに応じさせること。

最終的には、拉致の問題も含めて、包括的に解決する必要がありますが、日本の切り札は、国交正常化後の経済協力です。基本的な考え方は、小泉総理時代の日朝平壌宣言に明らかにされています。まさしく日本外交の真価が問われている。

冷静に外交力を発揮することが最も重要だということを申し上げておきたいと思います。

そして、武力行使は多くの犠牲を招くものだということはしっかりと踏まえて、日本政府には更なる外交努力を行ってもらいたいと考えています。

岡田克也
衆・民進/前党代表
1953年 三重県四日市市生まれ
東大法学部を卒業後、旧通産省入省
1990年 衆院議員に初当選

http://blogos.com/article/240713/