一記者の見た朝日新聞社――徹底解剖 日本の大組織
8/20(日) 7:00配信 文春オンライン

慰安婦報道、原発「吉田調書」誤報と不祥事が相次ぐ大新聞。躓きの石はどこにあったのか? 取材、編集現場での実体験から語る(出典:文藝春秋SPECIAL 2016年 季刊秋号)

◆◆◆

 アメリカ人が就きたくない職業の筆頭は、新聞記者――経済誌「フォーブス」(日本版)の無料配信記事にそうあった。米求人情報サイト「キャリアキャスト」社の今年の調査結果だという。去年も記者が最低だった。展望がないというのだ。調査方法がもっと分かると良かったが、独り作業的職業が多いのは興味深い。

 実際、記者稼業は不人気度9位のタクシー運転手に似ている。客がいないか鵜の目鷹の目で視線を歩道に走らす運転手のように、記者もネタを探して歩く。遠く離れた行き先を言う上客が稀なように、上ネタも滅多にない。ただ、そんな運転手記者の目にも映る会社の風情というのもある。山本七平氏にあやかれば、以下は「私の中の朝日新聞」「一記者の見た朝日新聞社」「ある異常体験者の偏見」となろうか。割り引いてお読みいただきたい。
一記者の見た朝日新聞社――徹底解剖 日本の大組織

社内の空気を読んで捏造

 月刊誌「WiLL」9月号に、「週刊朝日」元編集長の川村二郎さんがこんな朝日体験を書かれていた(メディア時評「朝日新聞は『君が代』に謝罪しろ」)。「国旗・国歌法」ができる1999年のことだという。その頃、朝日には「日の丸」と「君が代」に反対する有名人の意見が来る日も来る日も載り、川村さんは社外の知人から「紙面の作り方がどうかしていませんか」と言われて、「グーの音も出ない」でいた。

 そんな或る日、「海外の大会で、『君が代』が始まると、席を立つ観客が多い」という、Y編集委員の署名記事が載った。その記事なら私も覚えている。川村さんは「あれって、本当かよ」とY編集委員に聞いた。海外でのスポーツ大会はテレビでよく見るのに、そんなシーンは見たことがなかったからだ。時評は、こう続く。

「すると、こういう答えが返ってきた。『ウソですよ。だけど、今の社内の空気を考えたら、ああいうふうに書いておく方がいいんですよ』。あまりのことに、言葉を失った」

 編集委員は、朝日の顔である。

「ショックだった」と川村さんは記す。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170820-00003754-bunshun-soci