中国でスマートフォンを使ったインターネットサービスの利用が急拡大している。人気観光地の入場チケットや土産物もスマホアプリの決済機能を使って購入できるほか、タクシーやシェアリング自転車の利用も一般的になっている。

従来、中国ではクレジットカード決済などのインフラが不十分だったが、スマホを使った手軽なネットサービスがそこに一気に入り込んでいる格好だ。ただ、外国人旅行者がそういったネットサービスを利用することは相当ハードルが高いなど問題点もある。

当局の厳格なネット規制が敷かれ、海外の大手IT企業の参入も限定されている中国のネットサービスは、7億人超のユーザーを抱えた「巨大なガラパゴス」のような独自の“進化”を続けている。(外信部 三塚聖平)

物売りの手にQRコード

「扇は要らんかね?」

膨大な数の兵馬俑の展示・発掘作業が行われている中国屈指の観光名所、陝西省西安郊外の秦始皇兵馬俑博物館。最高気温45度という暑さが連日続く屋外では、冷えた桃やミネラルウオーターなどを持った物売りが熱心に観光客に声を掛けていた。

その中で、ある物売りが手に持っていたのは売り物の扇、そしてQRコードが描かれた紙だった。スマホのアプリを使ってQRコードを読み込めば、扇の代金を支払うことができるという。

兵馬俑博物館のチケット売り場でも、スマホ決済に対応した自動券売機があり、来場者が画面上に映し出されたQRコードをスマホで読み込んで次から次へと入場券を手にしていた。その近くにある、係員が対応する従来の窓口が行列を作っていたのとは対照的に映った。

スマホで入場チケットを購入した中国人観光客の男性は「スマホでの支払いはとても便利。現金は面倒だ」と話した。

コンビニ、自販機、タクシー、そして物乞いまで

7月下旬、日本記者クラブの中国取材団に参加し、首都の北京、内陸部の西安、沿岸部の福建省といった各都市を訪問した。行く先々で印象に残ったのはスマホを使ったネットサービスの拡大だった。

とりわけ、スマホのアプリを使った電子決済の利用は猛スピードで普及していた。今回見た中だけでも、コンビニエンスストアや外食チェーン、屋台、自動販売機、タクシーなどで、スマホの電子決済が利用されていた。

北京在住の日本人男性は「財布を忘れて家を出ることはできても、スマホ無しに外出することは考えられない」と苦笑した。

スマホを使った電子決済は思わぬところにまで達しているようで、今回は目にしなかったがQRコードを手に持った物乞いまでいると伝えられている。

スマホの電子決済の利用方法は簡単だ。例えば、自動販売機ならば購入したい商品を選択するとQRコードが表示され、それをスマホで読み取ってアプリ上の購入ボタンを押せば飲み物が出てくるという仕組み。

コンビニなどでは、QRコードを自分のスマホ画面に表示してレジ端末のスキャナで読み取るといった方式もあるが、いずれにせよ現金でのやり取りと比べて場合によっては短時間で済む印象だ。

もともと、中国ではクレジットカード払いに対応していない店や機器が多く、スマホを使った電子決済が受け入れられやすい素地があったとみられる。

また、汚れた紙幣が多く流通している中国では自販機などの機器が受け付けにくかったことや、偽札が比較的多いこともスマホを使った電子決済普及の一因と指摘されている。

「ウィーチャットペイ」と「アリペイ」が2大サービス

スマホを使った電子決済では、中国ネット大手の騰訊(テンセント)の「ウィーチャットペイ(微信支付)」と、アリババ集団の「アリペイ(支付宝)」が2大サービスとなっている。最近では、中国版LINEと称される「微信」を手掛けるテンセントのウィーチャットペイが利用者を伸ばしている。

スマホの電子決済を活用したサービスも広がっている。タクシー配車サービスの「滴滴出行(ディディチューシン)」のほか、多くの事業者が新規参入しているシェアリング自転車の存在が知られている。

http://www.sankei.com/premium/news/170825/prm1708250004-n1.html

>>2以降に続く)