【香港=粟井康夫】中国の国有複合企業大手、中国中信(CITIC)の常振明董事長は29日の記者会見で、2016年に商業生産を始めたオーストラリアでの鉄鉱石開発プロジェクトを中止する可能性に言及した。

鉱山の売り手との訴訟で敗れるなどすれば、最悪の場合は操業を停止せざるを得ないと説明。「リスクは現実のものとなっている」と語った。

CITICは06年、豪最大規模の磁鉄鉱鉱山の権益を取得し、1兆円以上を投資してきた。だが開発の難航や鉄鉱石市況の低迷で、5千億円以上を減損処理済み。売り手の豪資源開発会社ミネラロジーとは生産開始後に支払うロイヤルティーの算出方法を巡って係争中で、敗訴すれば採算割れの公算が大きくなる。

常董事長は「CITICは上場企業であり、株主への責任がある」として、国有企業でも不採算事業は容認できないと強調した。常氏の発言にはミネラロジーをけん制する狙いもあるようだ。

同日発表した17年1〜6月期の純利益は323億香港ドル(約4500億円)と前年同期比60%増えた。上海のオフィスビルや傘下のプロサッカークラブの一部権益を売却した利益が寄与した。一方、主力の金融部門は3%減益、資源・エネルギー部門は赤字となった。

7月には米マクドナルドの中国・香港事業の買収を完了した。常董事長は、傘下の銀行や書店との共同店舗やビッグデータの活用など相乗効果を追求する考えを示した。

伊藤忠商事やタイのチャロン・ポカパン(CP)グループとの提携の現状に関して、王炯副董事長兼総経理は「協力の余地は大きいが、各社にそれぞれの考えがあり、(実績を出すには)少し時間がかかる」と語った。

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