>>1の続き)

米国は、その時に武力行使に踏み切る可能性がある。このシナリオを、米国は待っているのだと思う。

米国にとって、北朝鮮を武力で潰すのはたやすいことだ。しかし、そうなれば周辺国である韓国や日本にも大きな被害が及ぶ可能性がある。

かつて米国と中国が手を組んで、北朝鮮を崩壊させようとしたことがある。クリントン政権時の1994年にも、前年に核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言するなど核開発に突き進む北朝鮮に対して、米国は本気で戦争をしようとしたことがある。

しかし、実行できなかった。下手にやってしまうと、北朝鮮国内が大混乱に陥る上、隣国である韓国では間違いなく100万人以上の死者が出ると言われていたからだ。

だからこそ、文在寅氏は何度も米国に「米韓合同軍事演習を中止し、北朝鮮と対話をしてほしい」と必死で訴えていた。

この最悪の事態を避けるためには、米国が北朝鮮と対話する姿勢を示すことが必要だ。しかし、文在寅氏が必死で訴えても拒否されたわけだから、日本政府が説得しようとしても、米国を翻意させるのは簡単ではないことは分かっている。

だが今、国連も北朝鮮を非難して、制裁を強化しようとしている。もちろん、北朝鮮の行為は肯定できるものではないが、一方的に北朝鮮の非難ばかり繰り返しても、この問題は解決しない。

繰り返すが、あくまでも鍵を握るのは米国だ。米国を説得することは容易ではないが、衝突を回避するために米国は北朝鮮と対話する姿勢を示し、再び6カ国協議開催を目指すべきだと僕は思う。

田原 総一朗
ジャーナリスト
1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、2010年から「激論!クロスファイア」に出演中。
新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。
2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。

(おわり)