韓国では最近、伝統衣装である「韓服」を実際に着てみる“韓服体験”が流行しているという。

韓国の4大古宮(景福宮、昌徳宮、徳寿宮、昌慶宮)では、韓服を着ていれば入場料が無料になるのだが、2013年までは韓服を着る観光客は月40〜70人と非常に少なかった。

しかし、昨年4月には6198人となり、今年4月には6万124人と爆発的に増えている。

外国人観光客はもちろん、韓国人女性も好んで着ているからだという。京都で着物レンタルをするのと同じような文脈かもしれない。

伝統衣装をアレンジした“改良韓服”が人気

韓国では昔からの韓服をより生活的にアレンジしたり、現代風にデザインしたりした“改良韓服”も登場している。

韓服の素材が綿や合成繊維であったり、ドレスのようなデザインであったりと本当に多種多様であり、なかには伝統的な韓服の原型をとどめていないようなアレンジをされているものも。

また、極端にスカートが短かったり、露出の高い改良韓服も登場しており、話題にはなるものの賛否両論がある。

それでも伝統衣装を大切にしようという意識そのものは、悪いことではないだろう。

伝統衣装が日本のパクリ!?

しかし、そんな“改良韓服”が日本の袴(はかま)にそっくりだという指摘が持ち上がり、ネット上でちょっとした論争も起きているさ。

きっかけは「“韓服体験ブーム”はいいが…日本の衣装“袴”スタイル?」と見出しを打って報じた韓国メデイア『ヘラルド経済』の記事だ。

同記事ではソウルの街中で、日本の袴と最近流行している韓服の写真を市民に見せたときの反応として、「人々は“あまりに似ていて驚いた”という反応を見せた」と解説している。10人中、8人が袴を韓服だと答えたとも。

実際に韓服体験をしていた24歳の女性は、「私たちの伝統衣装の美しさを肌で感じるために韓服を着たのに、日本のスタイルが隠れているとはまったく知らなかった」と話したそうだ。

その無邪気さは、最近のK-POPアイドルが旭日旗にオープンなところにも通じている気がするが、専門家の意見は違う。

同記事内の専門家は、「朝鮮時代は歴史上、チョゴリをスカートの中に入れて着たことはなかった。デザインだけでなく服の着方も重要だが、チョゴリをスカートに入れて着た瞬間、“日本服”になってしまう」と指摘。そして「韓服体験は韓国文化を知らせる一種のコンテンツだが、日本のデザインが登場するのは矛盾だ」と危機感を伝えた。

この記事は2500以上のコメントが書き込まれており、大きな反響を呼んでいる。

日本のパクリは大きな波紋を呼ぶ

改良韓服が袴にそっくりという今回の報道に限らず、日本のものをパクったというニュースは、韓国でもさまざまな波紋を呼ぶ。特に文学やアニメなどの分野で、その傾向は顕著だ。

例えば、一昨年は韓国文学界の大物が三島由紀夫の短編小説『憂国』の一部を盗用しているとして、大きな話題になった。

なかには「よりによってパクったのが日本の右翼思想を持つ三島由紀夫だなんて、国の恥だ」という意見も出ていた。

また、過去には日本のマンガ『ONE PIECE』をパクったとされるアニメ作品も。『ワピース』というアニメで、韓国でも“黒歴史”として批判されている。

改良韓服のなかには袴のパクリのようなものが存在するという今回の報道は、どのような影響を与えるだろうか。

今現在、人気を博している韓服体験に、暗雲が漂わなければいいのだが…。

慎武宏
1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書に『祖国と母国とフットボール』『イ・ボミはなぜ強い??女王たちの素顔』『ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実』など。
訳書に『パク・チソン自伝』『サムスンだけが知っている』など。プロデュースに『ザ・日韓対決 完全決着100番勝負』『韓流スターたちの真実』など。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinmukoeng/20170902-00075137/