産経ニュース、2017.9.9 22:24更新
http://www.sankei.com/politics/news/170909/plt1709090027-n1.html

 北朝鮮が6回目の核実験を強行したことで核ミサイルの脅威が深刻さを増している。防衛省は平成30年度政府予算の概算要求で地上配備型「イージス・アショア」導入や既存装備の改良を盛り込み、ミサイル防衛(MD)強化を急ぐ。だが、北朝鮮の技術進展に伴い、高高度軌道のミサイルや、発射が相次ぐ「飽和攻撃」への対処、抑止効果など、MD強化では乗り越えられない課題が浮き彫りになっている。

 「ミサイルが大気圏に入る前で迎撃するのが弾道ミサイル防衛だ。EMP(電磁パルス)に対してもちゃんとした能力を持つことが基本だ」

 小野寺五典防衛相は9日、記者団にこう語り、MDなどによりEMP攻撃対処に万全を期す考えを強調した。EMPは核爆発で発生するガンマ線で電気系統などをまひさせ、都市生活や防衛網に打撃を加える手段だ。北朝鮮は3日に実験した「水爆」でEMP攻撃が可能と主張している。

 日米両国が開発を進める新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は高度1千キロ以上で迎撃が可能で、地上数十〜数百キロで核爆発させるEMP攻撃に対抗する手段となり得る。イージス・アショアもブロック2Aの運用が想定される。

 防衛省はSM3による迎撃が失敗すれば、着弾直前に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で迎え撃つ二段構えを取るが、課題はEMP攻撃対処だけではない。北朝鮮が7月28日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」は通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で高度約3700キロに達した。現行SM3の最高高度約500キロはもちろん、ブロック2Aでも撃ち落とすことが難しい。