記憶遺産、「慰安婦」今期登録高まる 制度改善は次回から、国内で分担金拠出停止の声強まるのは必至
2017.9.12

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(旧称・記憶遺産)が、政治的思惑絡みの制度乱用から事業を保護するために導入する制度改革問題で、新制度の適用は2018〜19年の次期登録申請サイクルからとなることが11日、分かった。次期サイクルからの適用となったことで、今期(16〜17年)に日中韓を含む8カ国の民間団体などが共同で登録申請した慰安婦問題の資料が、遺産登録される可能性が高くなった。

 今期の登録申請案件は、登録小委員会の審査を経て、10月24〜27日に国際諮問委員会が最終的審査を行う。諮問委の判断を踏まえ、ユネスコのボコバ事務局長が決定する流れだ。

 「世界の記憶」をめぐっては15年10月、中国が申請した「南京大虐殺」文書が、事実関係や真贋(しんがん)の不確かさなど多くの問題点を指摘されながらも遺産登録された。日本政府はこれに強く反発し、制度改善を求めてきた。今回、慰安婦問題の文書が登録されれば、日本国内でユネスコへの分担金拠出の停止を求める声が強まるのも必至だ。

 一方、制度改革の最終報告は今年6月30日、ボコバ事務局長に提出されており、10月14日からパリで開かれるユネスコ執行委員会で正式決定される。

 最終報告には「南京大虐殺」文書のように疑義が呈された申請案件について、関係団体による対話のために時間を与えることを明記した。その上で(1)共同申請(2)申請案件に記載された事実や出来事に関し、異なる見解を含んだ登録への合意(3)合意が得られない場合、対話を繰り返し、次回登録申請サイクル(申請後最長4年間)が終了するまで対話を継続−を勧告している。春に出た中間報告の内容を踏襲した。

 現在、中韓などが共同申請中の慰安婦資料をめぐっては、日本の保守系民間団体が申請した「慰安婦と日本軍規律に関する記録」文書と同一の文書が含まれる可能性がある。民間団体は中間報告を踏まえ、ユネスコに対して中韓などの団体との協議を8月下旬、書面で申し入れている。

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170912/soc1709120023-n1.html