http://www.sankei.com/west/news/170926/wst1709260006-n1.html

 北朝鮮の核(水爆)・ミサイル実験でようやく危機を実感した韓国政府と軍が混乱している。北朝鮮のミサイルに対抗する手立てが、韓国には全くないことが明らかになったのだ。特に発射の瞬間を捉える偵察衛星は諸外国に「貸してほしい」とレンタルを依頼したが、全て断られた。韓国本土防衛の望みは暗い。(岡田敏彦)

誰か貸してくれないか

 韓国では北の核・ミサイル開発に対抗し、防衛システム「キルチェーン」を構築し本土を防衛することとしていた。韓国版「キルチェーン」とは、北の核・ミサイル施設に先制攻撃をかけるプランで、ミサイル発射の兆候を偵察衛星で把握し、発射場所を先制攻撃するもの。韓国空軍の戦闘機KF−16の地上攻撃能力を向上させるなどの改造費も含まれる大規模な防衛計画だ。ところが、このキルチェーンの第一歩となる偵察衛星を、韓国は持っていなかった。

 中央日報(電子版)などによると、韓国防衛事業庁は8月25日、レーダー搭載衛星4機と赤外線センサー搭載衛星1機の計5機の偵察衛星を21年から3年間で打ち上げ運用する計画を発表した。しかし、この計画が完成する23年までの約6年間は、北のミサイル発射の兆候を探知する手立てがない。そこで韓国軍は偵察衛星の「レンタル」というアイデアを思いつき、諸外国に打診したのだ。

 その結果は、「貸し借りするという発想は最初から無理だった」(韓国テレビ局SBS電子版)。韓国軍が打診したイスラエル、ドイツ、フランスからは、いずれも「貸せない」という通知が9月11日までに届いたという。

 軍事用の偵察衛星はいずれも「脅威のある場所」を恒常的に偵察できる軌道に投入されており、イスラエルなど3国の衛星が東欧や中東周辺を重点とした軌道を描いているのは間違いない。北朝鮮を偵察するためには軌道変更が必要で、そのためには偵察衛星の持つエネルギー(推進剤)を相当量失うこととなる。本来なら偵察高度を下げ詳細な情報を得るなど「いざというとき」のために使うエネルギーを失ってしまうのだ。また、映像からどれだけ細かい情報が得られるか(分解能)など軍事衛星の能力も「レンタル先」に明らかになってしまう。たとえ同盟国でも貸し借りなどあり得ない。

 しかも偵察衛星の寿命はどの国でも5年前後とされている。他国に貸せば衛星開発費と打ち上げ費用に加え、十年以上の長期スパンで考え抜かれた偵察衛星システム、さらには安全保障構想さえ変更を迫られることになる。

 SBSによると、3国からは偵察衛星を貸せないどころか、映像の貸与や販売もできないと、けんもほろろの応対を受けたという。

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