「国家の規制がない」はずの仮想通貨が、中国当局に翻弄されている。一時は1BTC5000ドル(約56万円)に近付いたビットコインの価格は、中国当局の「新規仮想通貨公開(ICO)」の禁止、さらには中国国内のビットコイン取引所の閉鎖を受けて急落。一時、1BTC3000ドル(約33万円)にまで暴落した。

実は、ビットコインの取引の90%超は、取引手数料がかからない中国で行われていた。昨今のビットコイン価格の急騰は、中国の人民が主導した典型的な投機バブルであった。

ビットコインは、国際決済の際には実に便利である。というわけで、中国共産党が資本移動の規制をしている中国において、ビットコインが爆発的に流行したのだ。人民元を外貨に両替し、外国に送金しようとすると、手数料の問題もさることながら、当局の規制により手続きが極めて煩雑になる。それどころか、当局の許可が下りず、送金できないケースも出てきている。

ビットコインは、中国当局の資本移動の規制をかいくぐる、抜け穴の一つだったわけである。

そもそもの問題が何かといえば、中国の「外貨準備」の中身なのである。中国共産党は、外貨準備の減少や過度な人民元安を食い止めるために、人民元から外貨への両替を規制しているのだ。

中国人民銀行は9月7日、2017年8月末の外貨準備高について、前月比105億ドル(約1兆1804億円)増の3兆0920億ドル(約347兆6026億円)と、7カ月連続で増加したと発表。中国の資本移動の規制強化は、確かに効果を上げている。

中国の外貨準備高は、中身がよく分からない。日本の場合、外貨準備の95%はアメリカ国債、および各国中央銀行への預金で占められている。

それに対し、中国の場合は、米国債は外貨準備全体の40%を下回る。残りの60%強は、民間銀行が保有する外貨を含んでいる、あるいはアフリカなどの鉱山などに投資されているといわれており、中央銀行が為替介入に使用することはできない。

中国の為替暴落に対する防衛力(外貨で自国通貨を購入する力)は、意外なほどに脆弱(ぜいじゃく)なのだ。というわけで、中国人民銀行は為替安や外貨準備減少を防止するために、資本移動を規制しているわけである(結果、ビットコインが大流行した)。

少なくとも、中国は10月の共産党大会が終わるまでは、「強い人民元」を演出しなければならない。とはいえ、資本移動の規制は中国への対内投資、中国からの対外投資の減少を招いている。

中国経済は人民元の信用不安と、投資減少による経済成長の低迷との間で、綱渡りを続けているというのが現実なのである。

■三橋貴明(みつはし・たかあき) 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は「経世論研究所」所長。著書に『中国不要論』(小学館新書)、『今や世界5位「移民受け入れ大国」日本の末路』(徳間書店)など多数。

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