2018年2月に開催される平昌五輪で、各国選手団や観客らを輸送する重要な役割を担う新型の高速鉄道が安全性を問われる事故・故障が相次いでいる。9月には自動列車保護装置(ATP)の作動テスト中に7人が死傷する追突事故が発生した。聯合ニュースは五輪の開幕に合わせようと無謀な試運転を行ったという批判が出ていると報じた。

また導入される新型車両は1カ月に一度の割合で故障を生じ、安全性の検証を巡って議論が起きているという。

2017年12月の完工を目指す平昌(ピョンチャン)・江陵(カンヌン)方面線。時速250キロが想定される高速鉄道によって、仁川(インチョン)国際空港−江陵間が98分で結ばれる予定だ。建設費は総額3兆9410億ウォン(約3940億円)を想定。

中央日報によると、この高速鉄道が開通するまでバスを2、3回乗り換えなければならず、3、4時間はかかるそうだ。高速鉄道は平昌周辺で絶対数の不足が予測される宿泊問題解決の一翼を担っている。

朝鮮日報などによると、9月13日午前4時半ごろ、京畿道楊平(キョンギド・ヤンビョン)郡の路線で、ATPの改良作業を終えて作動テストを行っていた列車2本が追突。40代の運転士が死亡し、別の60代の運転士ら6人が重軽傷を負った。

2本は同一線路上を5分間隔で同じ方向に走らせており、先行列車は駅の手前でATPが作動して停止した。ところが、後続の列車は止まらずに追突し、後続列車は衝撃で窓ガラスが割れ、先頭部分は大きくひしゃげた。

聯合ニュースは9月14日、平昌五輪の開幕に合わせて開通させようとして、無理な試運転を行ったと報じた。

鉄道施設公団はシステムエラーを事故の原因と指摘しているが、鉄道労組は「それは責任回避にすぎない。開通時期に追われて点検時間を節約しようとして安全対策もなく、無謀にも同一線上で2本の列車に試運転を強行させたことが根本的な原因だ」と強調した。

また、システムエラーが発生した場合、列車は追突するしかなく「運転士の命を懸けた無謀な試運転が惨事につながった」と非難した。

新型の高速鉄道は3月11日にも突然停止する故障を発生した。原因は主な改良点である電力供給部のボルトが1つ正しく締められておらず、そのためバッテリーが早く消耗してしまったようだ。

東亜日報によると、この問題は3月に国会の国土交通委員会で取り上げられ、新型車両は昨年12月に商業運行されてから1カ月に1回の頻度で障害が発生していると指摘されていた。

3月の故障を受けて、韓国鉄道公社(KORAIL)は改良した電力供給系統を集中点検してボルト問題を確認。「製造上の欠陥」と結論づけ、現代・起亜自動車グループ傘下の製造メーカー、現代ロテムを介して部品交換やシステム変更などの措置を行ったと伝えられる。

ただ、新型車両が故障を生じたのは運行開始から5〜19日しか経っていないことから、試運転が正常に行われて、初期障害の原因を確認して除去したかの議論が起きたという。KORAILは法律に基づいて実施したと釈明するが、専門家は別路線で試運転した論法に否定的で「線路は路盤と曲線の半径、高さなどに違いがあり、その路線で試運転が必要だ」と問題視したという。

この問題を指摘した国会議員は「平昌五輪を成功裏に行うには安全が必ず裏付けられなければならない」と正論を唱えた。これに呼応するように、韓国のネットユーザーは「未熟な技術で製品をパクろうとするからだ」などと書き込んだ。五輪が悲惨な事故で台無しになることだけは避けてほしい。

http://www.sankei.com/premium/news/170929/prm1709290004-n1.html

関連記事
韓国、平昌五輪の治安対策強化へ 北朝鮮国境まで80キロ、緊張高まり受け
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/09/80-7.php
韓国・平昌五輪/上 軍事境界線ツアー 「平和」を訴えるガイド
https://mainichi.jp/articles/20170926/ddl/k28/030/474000c
韓国・平昌五輪/下 企業にもチャンス インフラ、伸びる需要
https://mainichi.jp/articles/20170928/ddl/k28/030/355000c