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ほかには「1日チャーター」「空港送迎」「片道送り迎え」なども。大阪で5時間チャーターしても829元(約1万4千円)で、日本の大手タクシー会社の料金(2万4200円)より1万円も安く設定されていた。

ネットで予約、ドライバーも選択

ほかにも、日本でサービスを展開しているという「Ding Taxi」というサイトを発見。全世界50以上の都市でサービス展開をしているとうたっており、空港送迎のほか中国人ガイドによる観光ドライブ、ビジネス・ゴルフ用のチャーター、マイクロバスによるスキー場(軽井沢や富良野など)への送迎のサービスなどを展開しているという。

サイトから予約が可能で、成田や羽田、関空など主要国際空港のほか、新千歳や富山など、地方空港を含む8つが「出発地点」になっている。関空−難波駅を選んでみると、プリウスやアルファードの写真とともに、利用料が表示。予約時(8月末)の最安値は1万3千円で、日本の正規タクシーとあまり変わらない値段だった。

このサイトでは、ドライバーも選択できる。各ドライバーへの評価も掲載されており、「日本に詳しく、運転は安全。礼儀正しい。また日本にくれば必ず再利用する」「時間通りに来てくれた」「場所を間違えても迅速に連絡、迎えに来てくれた」など、100以上もの評価が掲載されているドライバーも。

支払い方法はネット決済のほか、現地での現金払いも可能。ただし、予約段階で予約金2千円と手数料650円をネット上でカード決済する必要がある。

大阪府内の白ナンバー

取材によると、関空では、一般ドライバーが送迎に使う場所が待ち合わせに使われるようだ。在日中国人のある男性ドライバーは、大阪府内の白ナンバーのトヨタのミニバンを使用。客がくると、さっと「荷物を」とスーツケースもトランクへ入れるなど、細やかなサービスもこなれた感じだ。

聞けば、男性は40歳で、中国東北地方の遼寧省出身。日本語を学ぼうと大阪の大学へ留学以来、15年間日本に住んでいるという。普段は貿易関係の仕事をしているといい、「よほどの用事がないと中国に帰らない」「今は『中国と比べて』ではなく『日本と比べて』を基準にしている」と、日本語を交えながら話した。

運賃の8割がドライバーに

中国では合法なシステムでも、日本で営業するには日本政府の許可を得なければ、道路運送法違反にあたる。男性に聞くと「非正規だよね」と認識はしている様子。男性が従事しているのは「本業ではないから、月15回ぐらい」といい、「家族もいるので、あまり冒険はしたくない」と、摘発を避けるため空港送迎のみを行っていると明かした。

ところで、運賃のうち男性が受け取れるのはいくらなのか。聞いてみると「8割くらいかなあ。関空−難波間だと1万3千円だから、100元(約1700円)は手数料として差し引かれるね」。運営会社は結構な利益を得ているのだった。

摘発難しい

スマホで予約・決済が完結する「中国式白タク」システムは証拠をつかみにくく、当局による取り締まりが難しい。今年6月、白タク行為をしていた中国籍の男2人が道路運送法違反容疑で沖縄県警に再逮捕されたが、別件で逮捕された両容疑者の口座などを調べる中で証拠を確保できた珍しいケースだったという。

日本の正規タクシードライバーは「中国式白タク」をどう思っているのか。関空で客待ち中の男性運転手(68)は「そもそも現金のやり取りがないと取り締まりできへんのやから、手の打ちようがない」とあきらめ顔。

別の男性(70)は「ここ1年で白タクは特に増えたと思う。だいたいがワゴン車で来とるようやね」とし、「白タクなのか、ほんまに友達の送迎なのかは分からんのが正直なところ。金のやり取りも見たことないし…」と話した。

奈良市の大手タクシー会社の男性取締役(68)は「中国式白タク」について「中国人は何でもアリですわ」と苦笑い。「こちらは国の許可を得て、責任を持って仕事している。でも、白タクは事故に遭っても保障もない。外国に来たとき、母国語が通じるのが安心なのは分かるけれど…」と話していた。

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警察官も停車レーンを巡回しているが、駐禁の取り締まりが中心で中国人の白タクを取り締まっている様子は無かった=関西国際空港
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関空の停車レーンにはワゴン車が多く、電話をしているドライバーからは中国語も多く聞かれた=関西国際空港

(おわり)