水原希子をCMキャラクターに起用したサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」の公式Twitterアカウントに、「エセ日本人」「反日モデル」など、“人種差別”ともとれるような、ヘイトに満ちた返信が相次ぎ、ネットを中心に大きな騒ぎとなった。

その後も出演したテレビ番組での発言が批判されたり、映画の評価が低いことを彼女の演技力のせいと報じられるなど、たびたび騒動の中心となっている。そんな水原へ向けた攻撃は、なぜこんなにも激化するのだろうか?いったいどんな人が批判的なコメントを綴っているのか?

『悪意の心理学 悪口、嘘、ヘイト・スピーチ』(中公新書)の著者であり、社会心理学的な見地から“ことばとコミュニケーション”に関する研究を進めている、愛知学院大学心身科学部心理学科の岡本真一郎教授に聞いた。

■差別や偏見だけでなく、嫉妬も炎上の引き金に

サントリーのTwitterアカウントに向けては、アメリカ人の父と韓国人の母の間に生まれたハーフで、国籍はアメリカという彼女の出自に絡めた非難の言葉が目立った。しかし、「今回の騒動で書き込みをしている人の心理は、外国人に対する排斥意識がすべてではない」と岡本教授は語る。

「インスタグラムを中心にした、水原さんのさまざまなSNSでの言動についての反発心が、今回の騒動の引き金となった可能性は十分にあるでしょう」

もともと水原のSNSには、“中国を侮辱した”と指摘されて世界各国を巻き込むこととなったツイートや、“FUCK YOU”と大胆にロゴが入ったTシャツを着た写真、トップス1枚でトイレの便座にまたがる写真など、賛否両論を招くことを想像しやすい、挑発的な投稿も少なくない。

今回、水原へ罵詈雑言の数々を発したのは、ネット上で右翼的な立場をとる、いわゆる“ネトウヨ”が多いのではないかと岡本教授は分析する。

「投稿の内容から見ると、おそらく右翼でも、街宣活動に参加する人ではなく“ネトウヨ”ではないでしょうか。前者ならば、水原さんのような“いちタレント”の騒動に、いちいち頭を突っ込んだりしないように思います。遊び半分のような、気楽な気持ちで書き込んでいるのかもしれません」

岡本教授の著書によれば、不快感を表したり相手を攻撃するときには、卑罵語や差別語、ヘイト・スピーチなど、あらゆる種類の言葉が用いられるという。

ちなみに卑罵語とは“ガリガリ”“アホ”などの表面的なののしり言葉に加えて、「消えうせろ」「汚らわしい」などの具体的な内容を伝える言葉も含む。そして、どんな文脈で言葉が発せられるかによって、同じ単語でも意味合いは変化する。

「ネットという手軽なツールを選んで、非難の言葉を発するという点でも、熟慮せず安易な気持ちで書き込んでいるのが想像できます。そのため、根深い悪意から書き込むというよりは、水原さんをからかって動揺するのを楽しんでいる、そんな“表面的な悪意”があるかと思います」

一方で、彼女に向けられた批判的な言葉は、単純な悪意から発されているものばかりではないと、岡本教授は説く。

「モデルとして活躍する並外れた容姿をお持ちの水原さんに対して、嫉妬・羨望の裏返しで攻撃している人も、きっといるはずです。

有名人でもある程度目立つ人は、注目を集める分だけ、やはり炎上のリスクも高まってしまいがちです」

■批判対象のリアクションを見て、よりエスカレートすることも

どんな意図があるにせよ、批判的な言葉が集まれば、人気商売の有名人は、なにかしらの反応を示すことが多い。水原の場合は騒動の数日後、「LOVE & PEACE」と、自身の思いをツイートした。

「人間というのは自分がやることに対するリアクションを見て、相手の動揺が感じられれば、よりエスカレートします。中には、批判派の似通った意見を参照して、同調している人もいるものです」

そこで岡本教授が懸念するのは、この騒動を受けて発された、あるタレントのツイートだ。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20171004/Cyzowoman_201710_post_154931.html

>>2以降に続く)