「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅しによって左右されることがあってはならない」−。安倍晋三首相は衆院解散方針を表明した9月下旬の記者会見で強調した。

「国難突破解散」と位置付け、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、対話ではなく圧力をかける方針を掲げる。安倍政権が進める圧力路線への評価も問われることになる。

■対話を求めて

こうした北朝鮮を巡る状況に在日コリアンは、さまざまな思いを抱えている。日本最大の在日コリアンの集住地域である大阪市生野区。ここに拠点を置き、在日コリアンの人権保障や法律相談などを行う「コリアNGOセンター」の金光敏事務局長(45)は「北朝鮮の問題解決には対話が重要だ」と強調する。

9月3日の北朝鮮の核実験に対し、同センターは朝鮮半島の平和実現と非核化を求める立場から抗議声明を発表。核実験を「決して許されるものではない」とした上で、日本政府に対して「圧力は緊張緩和と対話の促進につながらず、相互不信を高める」と指摘する。

朝鮮半島を巡る緊張の高まりは、在日コリアンの生活に深刻な影響を与える懸念もあり、日本社会の現状を「いまなおヘイトスピーチが蔓延(まんえん)し、敵視と排外が根強い」(同声明)としている。

ヘイトスピーチについて、金さんは「こうした行為を社会が黙認すれば、次の差別へと拡大する。どんな小さい差別でも見つけた時点で『ノー』という輪を広げることが大切だ」と語気を強めた。

フィリピンなど外国にルーツを持つ子どもの学習支援を行う「minamiこども教室」の運営にも取り組んでいる同センター。金さんは「人権尊重と多文化共生の社会を目指すことを問う選挙になってほしい」と望む。

■マイノリティーへの共感

在日コリアンの青年が運営し、多文化共生社会の実現を柱の一つに掲げる同市天王寺区の在日コリアン青年連合(KEY)は、8月に事務所をリノベーションし、コリアンブックカフェ「ちぇっちゃり」をオープンした。ドリンクを飲みながら、韓国、朝鮮に関する本を読むことができる。

設立はヘイトスピーチが起きる中、在日コリアンや日本の青年が朝鮮半島について学ぶ場所が必要との思いからだ。在日コリアンに限定した活動ではなく、さまざまなマイノリティーに関する本も置くなど裾野は広い。

KEY事務局の李明哲さん(32)は、障害者やLGBT(性的少数者)などにも関心を寄せる理由を「マイノリティーとしての共感と、(障害者問題などでは)マジョリティーの自覚がある。違うマイノリティーのことも知り、マジョリティーが動かなければ、問題解決には向かわない」と説明する。

国内の雰囲気を「マイノリティーへの偏見や差別が助長されている」とみる。その上で「誰もが輝き続けることのできる『開かれた社会』になってほしい」と願った。

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/171009/20171009027.html

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/171009/images/IP171008TAN000004000_01.jpg
コリアンブックカフェ「ちぇっちゃり」。「日本の青年との交流の場をつくりたかった」と開設の趣旨を語る李さん