>>1の続き)

北朝鮮が核兵器の開発をするとか、ミサイル開発をするとか、それを行ったから、米国は北朝鮮を軍事的に攻撃できるというような権利はない。

さらに、日本が、北朝鮮に対して、「我が国は北朝鮮の国家及び指導部を軍事的に崩壊させる行動には関与しない」と述べれば、北朝鮮が日本を攻撃する理由はない。事態は極めて単純明快なのである。

米国はこれまで北朝鮮と交渉してきたと言っているが、「北朝鮮の国家及び指導部を軍事的に崩壊させる行動は行わない」と正式に提示したことはないはずだ。それだけではない。

昨年から、米韓軍事演習で、北朝鮮指導者を抹殺する軍事計画を発表したり、北朝鮮の国家自体を攻撃する作戦を強化している。

私たちは、国家の指導者は平和を目指すものとの思い込みがある。そうではないことを指摘したのがアイゼンハワー大統領であった。

アイゼンハワーは第2次大戦中、欧州戦線の連合国軍最高司令官であった。米国で最も尊敬された軍人と言っていい。その彼は大統領を辞める時に異例の国民への呼びかけを行った。主要論点を見てみたい。

・350万人の男女が防衛部門に直接雇用されています。私たちは、アメリカのすべての会社の純収入よりも多いお金を毎年軍事に費やします。
・軍産複合体による不当な影響力の獲得を排除しなければなりません。誤って与えられた権力の出現がもたらすかも知れない悲劇の可能性は存在し、また存在し続けるでしょう。

「悲劇の可能性」は、無意味な戦争に入っていくことを意味している。そして、アイゼンハワーの懸念通り、米国はその後ずっと戦争を続けている。その主たる要因は軍需産業に利益をもたらすためである。

このことと、北朝鮮問題の緊張を見てみよう。

◆北朝鮮特需に沸く米国

毎日新聞9月26日は次の報道をした。

「北朝鮮特需」に沸く米軍産複合体、米上院 政府案を600億ドルも上回る国防権限法案を可決、米国防産業が"北朝鮮特需"に沸いている。米上院は、2018会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法案を89対9の圧倒的な賛成多数で可決。

予算規模は総額約7000億ドル(約77兆円)で、政府案を約600億ドルも上回った。北朝鮮が開発を急ぐ核・弾道ミサイルに備える予算などが上積みされた。主要軍事産業の株価も上伸を続け、軍産複合体が北朝鮮情勢の恩恵を受けているとの声も出ている。

軍の再建を掲げるトランプ政権は今年5月、前年度比1割増の約6400億ドルの国防予算案を議会に提出。だがマケイン上院軍事委員長らが北朝鮮を含む"現状の脅威に対応するには不十分"と主張し、議会側がさらに増額した。

北朝鮮問題の緊張は軍需産業だけでなく、米国は、日本関係でも利益を得られる。緊張を強化することによって、日本国内に「日本の安全は米軍に依存しなければならない」との空気をつくられる。それによって米国は日本を次の方向に誘導することが出来る。
 
(1)憲法を改正し、集団的自衛権を一段と強化し、自衛隊を米国の戦略のために海外に派遣し、時によっては戦闘もさせる。

(2)日本の軍事費を増大させ、米国製の兵器を日本に買わせ、それを米国の戦略に役立たせる。

(3)在日米軍基地を強化する。

これに加えて、米国国内で不人気のトランプ大統領は戦争ムードを盛り上げることによって、支持率を高めることを意図している。それは安倍首相も同様である。

北朝鮮を緊張状態に持っていくのは容易なことだ。北朝鮮向けの軍事演習を強化すればいい。金正恩に対して、米国は北朝鮮を軍事攻撃するかもしれないという恐怖に誘導すればいい。そうすれば自然に北朝鮮はミサイル実験や核開発を進め緊張が高まる。

安倍首相のいう「国難」は北朝鮮だけの意志で作られたものではない。米国が北朝鮮を巧妙に誘導しているのである。


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(おわり)