>>1の続き)

北朝鮮に対する国連制裁の“メニュー”は次第に狭められ、対北攻撃へと日々傾斜している。かくなる緊張下、トランプ大統領は11月に来日し、安倍首相と中国共産党大会後の中国・北朝鮮情勢を詰める。日米首脳会談では、米国の同盟国?であるはずの韓国の「扱い」も話し合われるに違いない。

日米首脳会談では是非、韓国人の「現実を直視する能力」について認識を共有してほしい。産経新聞の先輩・司馬遼太郎氏の《街道をゆく》シリーズの《韓(から)のくに奇行》に、否、《韓のくに紀行》に詳しいが、司馬氏はこの中で韓国人の「現実を直視する能力」を明確に否定している。

昭和に厳しい、いわゆる司馬史観に筆者は必ずしも賛成せぬが、司馬氏の朝鮮民族史観は冷徹だ。文大統領もまた「現実を直視する能力」がない。前述の記者会見でも、文大統領は力説していた。

「朝鮮半島での軍事行動は韓国だけが決定できる」

「韓国の同意になしに、誰も韓半島での軍事行動を決定できない」

その上で「『米国とトランプ大統領』が、北朝鮮に対するいかなる選択肢を選ぶとしても、韓国と選択肢を十分に協議すると『約束』した」と語った。

ロイター通信のインタビュー(6月)で、文大統領は慰安婦など歴史問題をめぐり日本政府が「最善の努力をしていない」と批判したが、2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった『約束』は、かくも簡単に破られる。文大統領が『約束』を持ち出すのは片腹痛い。

それ以前の問題として、自国の主権を最重視し、韓国をまるで信用していない『米国とトランプ大統領』が従北サヨクの文大統領に、米本土に届く核・ミサイルの無力化を図る超弩級の戦略選択を相談する確率はかなり低い。

文大統領による記者会見の6日後、文氏はさっそくお灸をすえられた。

米国の政府系メディア《ボイス・オブ・アメリカ=VOA》が、2人の在韓米軍司令官経験者を通して「米国政府の本音」を伝えた。同時に、在韓米軍司令官時代以来の「対韓疲労」も色濃くにじんでいた。

2006〜08年にかけて在韓米軍司令官を務めたバーウェル・ベル退役陸軍大将は断じた。

「北朝鮮が米国本土を攻撃すると威嚇しているが(米国が)軍事的対応に出る場合、在韓米軍の運用には米韓両国の承認が必要だが、仮に(韓国が)拒否しても、米国は国際法に従い韓国に駐屯していない(オフショア)軍事資源により北朝鮮を攻撃できる。そこに、韓国の承認・協力は必要としない」

「(米本土・ハワイ・アラスカ・グアムと北朝鮮周辺の海上に陣取る米軍資源に加え)日本や豪州といった(米軍が駐留する)他の同盟国も、韓国の承認を得ず作戦に参加することが可能だ」

「北朝鮮の米本土に達する核打撃力に関し、米韓相互防衛条約では直接的明示がない。従って(北朝鮮の対米核打撃力の無力化は)条約の枠組みの外で行われる」  2011〜13年まで在韓米軍司令官だったジャームズ・サーマン退役陸軍大将も同じ認識を明言した。

「全ての国家に自衛権がある。北朝鮮が延坪島を砲撃した際、韓国が反撃し自衛権を発動したケースと同様、我々も自衛権を有している。米領グアムにミサイルが襲来するのなら韓国と同様、米国も生存権を行使する。韓国の承認を必要としない」

そういえば、米国憲法にも、自衛・生存に伴う諸々の措置を実行するにあたり「同盟国の同意」をうたった条項はない。

在韓米軍駆逐を謀った従北サヨクの盧武鉉大統領

さて、先述した、2人の在韓米軍司令官経験者に透けて見えた「対韓疲労」について論ずる。まずは、対韓疲労を発症させた原因の一つは戦時作戦統制権だ。

戦時作戦統制権とは、戦時に軍の作戦を指揮する権限。現在の米韓連合司令部では、在韓米軍司令官(大将)が連合軍司令官を兼務して戦時作戦統制権を行使し、連合軍副司令官には韓国軍の大将が就いている。言い換えれば、韓国軍は戦時、米軍の指揮下で軍事行動を実施し、単独で自軍を動かせない。

戦時作戦統制権の淵源は、朝鮮戦争(1950〜53年休戦)にまでさかのぼる。以来、北朝鮮情勢の緊迫化や従北サヨク政権の出現の度、戦時作戦統制権が米韓の駆け引きのテーブル上に並んだ。

従北サヨクの盧武鉉政権は米国に対して戦時作戦統制権の返還を求めた。実は盧武鉉・大統領は返還要求前、トンデモない極秘命令を韓国軍合同参謀本部に下していた。

「在韓米軍撤退と撤退に伴う対策の研究」

自軍の戦力の限界を悟る韓国軍合同参謀本部は、のけ反った。そこで、盧大統領の研究命令を「戦時作戦統制権の返還」に巧みにすり替えたのだった。

(続く)