県内の在日朝鮮人らでつくる実行委員会が主催し、約60年の歴史を持つ日朝の文化交流事業が今月、県内で開かれている。北朝鮮が核開発や弾道ミサイル発射を続け、その対応が衆院選の争点の一つにもなる中、事業に携わる人たちは、日本人との共生への願いを吐露した。

幕が上がると、朝鮮半島の芸能や古典を題材にした躍動感ある演舞が繰り広げられた。今月11、12日、上田市と長野市で開かれた「金剛山歌劇団」(東京)の公演。文化事業は、北朝鮮と日本との友好親善を目的に1956(昭和31)年に始まり、県内各地で毎年行われてきた。

長野、上田会場とも数百人が来場。大半は日本人の客だった。「舞踊がとてもすてきだった」。長野市の60代女性はそう話した後、「争いがないことが一番ですよね」と言った。

長年の公演活動で「歌劇団のファンが定着している」。長野公演の実行委に入る在日2世の李忠明さん(55)=長野市=は手応えを話す。核・ミサイル開発を継続する北朝鮮と、武力行使も辞さない姿勢の米国の間で挑発の応酬が続く。「在日」への風当たりの強さは感じているというが、公演開催を「日本の方々が応援してくれた」と感謝した。

約70人いる歌劇団や実行委のメンバーは在日2〜4世が中心だ。「北朝鮮本国から来ていると勘違いされるけど、そうじゃない。みんな日本で生まれている」と上田市の公演の実行委員長で3世の兪太樹さん(55)=上田市。「僕らは向こうに帰る所もないし、日本に永住していく」とする。「共存していく土台をつくるため」に公演を続けたい―と決意を語った。

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)県本部の李光相委員長(68)は、松本市の県本部や長野朝鮮初中級学校には、無言電話などの嫌がらせがあるとした上で、「誰も核兵器なんて良いとは言わないし、戦争なんて願っていない」と強調。

朝鮮戦争は国際法上、継続しており、核保有国の米国に対抗しようとする北朝鮮の立場に触れつつ、「戦争したらどうなるか、みんな知っている。選択肢としてあり得ない」と述べた。

公演では、半島の統一を願いながら民謡「アリラン」が歌われた。会場を訪れた日本に20年ほど暮らす韓国出身の女性(58)=長野市=は、半島の南北分断について「悲しい歴史」とし、「南北の国民同士では対決意識はない」と話した。

公演は28日にも松本市のキッセイ文化ホールで開く。

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171019/KT171018FTI090007000.php

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長野市で開かれた金剛山歌劇団の公演。大勢の日本人の観客が来場した=12日、長野市

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