韓中政府による「THAAD合意」について、中国側は1日、満足したような反応を見せた。韓国側から「中国の報復による被害には全く触れず、THAAD追加配備見送り、ミサイル防衛(MD)不参加、韓米日軍事同盟不可という中国が望んだ『3つのノー(三不)』だけを約束した」という反応が漏れるのとは対照的だ。

 中国共産党の機関紙、人民日報は1日、韓国が中国の要求に積極的に応じたため、包容したというトーンのコラムを掲載した。系列紙の環球時報は今回の合意が「最適の結果を実現した」と報じた。それだけ今回の合意が中国の利益と要求をしっかり反映しているとの見方だ。

■中国「韓国が積極的だった」

 人民日報は1日付紙面に掲載したコラムで、「最近(韓国側から)一連の積極的な兆候が見えた」とし、「文在寅(ムン・ジェイン)氏は大統領に当選後、中国に友好的、積極的な態度で中国の利益関係を重視し、THAAD問題を適切に処理しようという積極的な望みを表現した」と指摘した。双方の交渉過程については、「韓国は米国のMD体系に加わらないとする現在の立場に変わりがなく、韓米日の安全保障協力は3カ国の軍事同盟には発展させず、韓国政府はTHAADの追加配備を考慮しないと改めて表明した」とし、「中国の懸念に積極的に呼応した」と評した。その上で、中国が交渉に応じた理由について、「隣国に善意を示す周辺外交方針」を挙げた。韓国が中国に先に接近し、関連する要求を受け入れた以上、習近平出席の外交理念である「親善互容」に従い包容したとの立場だ。人民日報は韓国に対し、「自国が表明した立場を実践し、引き続き関連する問題を適切に処理しようという努力を着実に傾けなければならない」と注文した。環球時報も1面記事で、「韓国外交部長官がTHAAD問題について、『3つのノー』原則を約束した後、両国の外交当局が(合意について)明らかにした」と指摘した。

■中国、THAAD問題は「条件付き封印」?

 韓国が安全保障上の約束をしたので、中国が合意に応じてやったといった態度は、中国外務省の定例会見でも目立った。中国外務省の説明が実際の合意文と一致している側面もある。10月31日に公開された合意文には「中国側は韓国側が表明した立場に留意し、韓国側が関連する問題を適切に処理することを希望する」との文言がある。ここで中国が留意した韓国の「立場」とは何かは明示されておらず、韓国がどんな問題をどう処理するかもあいまいだ。韓国政府関係者からは「THAADが中国を狙ったものではないとする韓国の説明を中国が『留意』したものだ」との説明が聞かれた。

 しかし、中国語で「注意到」と翻訳された「留意」が何を指すものか、中国外務省の説明は異なる。合意発表当日、中国外務省の華春瑩副報道局長は「我々は韓国側が『韓国は米国のMD体系に加わらず、韓米日の安保協力を軍事同盟に発展させず、THAADを追加配備せず。現在韓国に配備されたTHAADで中国の戦略的安全保障利益を損ねない』と公に表明したことに留意する」とし、「韓国が言行を一致させ、先に述べた態度を実際に履行し、関連する問題を適切に処理することを望む」と表明した。「3つのノー」という約束に加え、在韓米軍に配備されたTHAADが前方探知モードではなく、中国の利益を損ねないと立証する責任まで韓国に負わせたものであり、それについて「留意する」と述べたものだ。

 合意発表当日、韓国大統領府(青瓦台)関係者は「(THAAD問題を)その瞬間に『封印』した」と述べた。しかし、中国側の反応を見れば、それも確実ではない。合意文には「あらゆる分野の交流協力を正常な発展軌道へと速やかに回復」させるという項目がある。韓国政府の説明に従えば、THAAD「封印」後に報復が「全面解除」されるようだ。しかし、中国外務省の定例会見で「今後どのような措置が取られるのか」との質問が出たものの、華副報道局長は「韓国側が関連する立場を実際に履行し、双方が各分野の交流・協力を推進する上で良好な条件をつくることを望む」と答えた。THAAD「封印」は韓国の約束履行を前提条件とする「条件付き封印」だとの立場だ。

 「両国の軍事当局間のルートを通じ、中国側が懸念するTHAAD関連問題について意思疎通を行うことで合意した」という文言についても、中国側からは異なる解釈が聞かれる。環球時報は専門家の話として、「(THAADの)探知能力を低くし、中国を狙うことができないようにする技術的譲歩を中国軍が韓国軍に要求する可能性がある」と指摘した。

金真明(キム・ジンミョン)記者

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<THAAD:上から目線の中国「韓国側が接近したので包容」>
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/11/02/2017110200808.html