<大阪地裁>保守速報に賠償命令…ネット上の差別扇動サイト
判決を前に李信恵さん(左から2人目)と支援者

 【大阪】インターネッ上の差別扇動サイト「保守速報」に掲載されたブログ記事によって精神的苦痛を被ったなどとして在日同胞の李信恵さん(フリーライター、東大阪市)がサイトを運営する男性に2200万円の損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁(森田浩美裁判長)は16日、ヘイトスピーチと認定し、200万円の支払いを命じた。原告代理人は「一方的に拡散されるネット上の差別被害は深刻で、回復も容易ではない。まとめサイト運営者への賠償命令はわれわれが知る限り初めて」と評価した。

李信恵さん対在特会に続く勝訴

 保守速報を運営する男性は匿名掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた李さんを侮蔑するコメントをそのまま転載しただけでなく、コメントの選択、順番の入れ替え、文字の拡大・色づけなどの編集をしたうえで掲載した。

 2013年から約1年間にわたって保守速報に掲載された45本の記事を見ると、「北朝鮮の工作員」という李さんの社会的評価を低下させるものや、「キチガイ」「寄生虫」といった社会通念上許される限度を超えると思われる内容を含む。なかには、「トンズル」という日本からの排除をもくろむ表現や、「シネ」「そのまま逝け」といった明らかに脅迫まがいの内容もあった。

 原告代理人は李さんが不安や不眠に陥ったり、突発性難聴や円形脱毛症を発症するなど大きな精神的苦痛を受けたと指摘。記事を「名誉毀損」「侮辱」「人種差別」「女性差別」「いじめ」「脅迫」「業務妨害」という7つのカテゴリーに分類し、損害賠償を請求した。

 森田裁判長は李さんへの「北朝鮮の工作員」といった表現行為を社会通念上許される限度を超えた侮辱にあたると認めた。また、「日本から叩(たた)き出せ」などの記述は排除をあおり、人種差別にあたるとした。「ババア」「ブス」などと容姿を揶揄したことも挙げ、「名誉感情や女性としての尊厳を害した損害は甚だしく、複合差別だ」と指摘した。

 運営者側は「情報の集約に過ぎず、違法性はない」と主張していたが、森田裁判長は「表題の作成や情報量の圧縮で、内容を効果的に把握できるようになった」として認めなかった。

 李さんは対在特会も高裁で勝訴している。

(2017.11.29 民団新聞)

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