◆【メガプレミアム】「どうせ裏切る」シー・シェパード捕鯨妨害中止宣言に飛び交う憶測 テロ等準備罪も影響か

反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」が突然、南極海での日本の調査捕鯨船に対する妨害活動の中止を宣言したことが、さまざまな憶測を呼んでいる。
日本の捕鯨関係者は長年、SSに苦しめられてきただけに、宣言を額面通りに受け取らない人も多い。
「不気味だ」「どうせ裏切る」。SSが今後、どういう行動に出るのか、疑心暗鬼が渦巻く。

■方針転換に「不気味」

SSの創設者、ポール・ワトソン容疑者=国際手配=は8月28日、南極海での日本の調査捕鯨船に対する妨害船を今冬は派遣しないとする声明文を出した。
SSが理由に挙げたのは資金不足に加え、日本側の監視体制の強化で妨害活動がしづらくなっているというものだ。
日本が衛星を使って妨害船の動きを捕捉。
容易に調査捕鯨船に近づけなくなり、費用のかさむ直接の妨害行為から手を引くとしている。

さらにSSは、日本で新たな法律が施行されたことも理由に挙げた。
国際社会と連携してテロや組織犯罪に立ち向かうため、共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法(7月11日施行)を指すとみられている。

ただ、SSは2005(平成17)年から毎年、日本の調査捕鯨船に対し妨害活動を行い、捕鯨船に向けて信号ロケットを発射したり薬品入りの瓶を投げつけたりし、さらには、スクリューにロープを絡ませるなど数々の過激な活動を繰り返してきた。
昨年からは高速の新型艇の派遣にも踏み切った。
それだけに、関係者は宣言の真意を測りかねている。

水産庁の担当者は「(SSの妨害中止宣言は)文字通りに受け止めることはできず、不気味だ」とし、日本捕鯨協会の久保好事務局長(55)も「今までも裏切られたことがあった」と不信感をあらわにする。

■太地から活動家消える

SSが今回なぜ、妨害中止を打ち出したのか。
その背景について、最新の動きを踏まえてさらに分析してみたい。

実はこの宣言に先立ち、変化の兆しはあった。
SSが日本での主な活動の場としている和歌山県太地(たいじ)町。

2010年、伝統的なイルカ追い込み漁を批判的に扱った映画「ザ・コーヴ」が公開された後、活動は激化し、9月1日からの漁解禁にあわせて例年、SSなどの活動家が大挙して押し寄せるのが“恒例”だった。
活動家は「クジラやイルカのためだ」と語り、漁師らに挑発的な言動を浴びせたり、執拗(しつよう)にビデオやカメラ撮影を行ってインターネット上で公開したりしてきた。

だが、今年は活動家の姿はほとんど見かけないという。
9月3日の今季の鯨類初捕獲の際も妨害は一切なかった。
関係者は「例年に比べると、あまりにも静かだ」と語る。

この背景に、日本側の締め付けの強化があるとみられているのだ。
法務省入国管理局や警察当局は2020年東京五輪・パラリンピックを控え、活動家の入国を警戒。

すでに昨年5月にノルウェー出身の女性活動家を、今年5月にもSSのフランス人主要活動家を、それぞれ水際で身柄を拘束して強制送還している。
SSのサイト上には、太地への活動がしづらいことをうかがわせる内容も記されており、日本側の対策は一定程度、効いてきているのだろうか。

■国際世論の流れ変化も

反捕鯨のアピール力が低下しているといった国際世論の流れの変化があるという見方もある。
その一端が調査捕鯨に批判的な目を向け、SSの拠点もある反捕鯨国オーストラリアの対応だ。

写真:追い込み漁で捕獲されるバンドウイルカ。
反捕鯨のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」で批判にされされた=平成27年9月、和歌山県太地町
http://www.sankei.com/images/news/171230/wst1712300005-p1.jpg

産経ニュース 2017.12.30 17:00
http://www.sankei.com/west/news/171230/wst1712300005-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/171230/wst1712300005-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/171230/wst1712300005-n3.html
http://www.sankei.com/west/news/171230/wst1712300005-n4.html

※続きます