明らかなのは、この政権が発足から半年以上経た今日においてすら、具体的な対日政策を何も決めず「放置」していることである。だからこそ、彼らは日本との間の歴史認識問題に関わる様々な市民団体の動きを後押しもしなければ、統制もしていない。

 背景にあるのは、韓国国内における日本への関心の急速な低下である。象徴的に示しているのが慰安婦合意を巡る状況である。周知のように韓国世論はこの合意に否定的な感情を有している。保守政権であった朴槿恵政権が結んだ慰安婦合意に対する反感は、進歩派政権である文在寅政権にもあり、彼らが可能であれば合意の見直しを行いたい、と思っていることは疑いない。だからこそ、韓国世論の強い圧力に押されて、進歩派政権である文在寅政権が慰安婦問題を巡って日本への猛烈な動きを行う状況を作り出して当然に見える。

 しかしながら、現実にはそのような事態にはなっていない。その理由はただ一つ、実は慰安婦合意見直しを迫る「世論の強い圧力」、それ自体が存在しないからである。確かに人々は慰安婦合意に対して不満を有している。だが、この不満は政権の支持率などに影響を与えるようなものではない。人々がより大きな関心を持っているのは、北朝鮮や中国、アメリカとの関係であり、何よりも自らの生活に直結する国内問題だからである。だからこそ、文在寅政権は取り組みの難しい対日関係を巡る懸案を、意図的かそうでないかはともかく、全て後回しにしてここまできたことになる。