2018年1月1日05時00分

 現在の安倍政権になって6回目の新年を迎えた。近年まれな長期政権である。

 しかし、与えられた豊富な時間を大切に使い、政策を着実に積み上げてきただろうか。

 正味5年の在任で、例えば、社会保障と税という痛みを伴う難題に正面から取り組んだとはいえまい。持論の憲法改正も、狙いを定める条項が次々変わり、迷走してきた感が深い。

 原因の一つは、国政選挙を実に頻繁に行ったことにある。

 ■場当たり的政権運営

 政権を奪還した2012年12月の衆院選まで含めて数えると合計5回。ほぼ年に1回の勘定だ。3年に一度の参院選が2回あり、14年と昨年はいずれも強引な衆院解散に打って出た。

 選挙に向け、政策の看板も次から次へと掛け替えてきた。

 誠に慌ただしい。

 長期政権にもかかわらず、なのか、長期政権を狙ったがゆえに、なのか。皮肉なことに、安倍政権がよって立つ「時間軸」は、極めて短いのである。

 それは日本政治の多年の弊ともいえるが、度が過ぎれば民主主義の健全さが失われる。

 学界、経済界、労働界の有志の集まり「日本アカデメイア」などは昨年12月、「先進民主政はどこへ向かうのか?」と題するシンポジウムを催した。

 ポピュリズムの広がりや既成政党の退潮といった欧米各国の現状が論じられる中、日本について指摘されたのは、やはり場当たり的な政権運営のあり方だった。

 「政権維持が自己目的化し、長期的見通しや政権担当期間を通じてのプログラムがない」(飯尾潤・政策研究大学院大学教授)

 その結果、何が起こるか。

 シンポでは、財政再建や地球温暖化対策といった政策課題を解決する難しさが挙げられた。

 長い時間軸の中で取り組まなければならないテーマである。今さえよければという姿勢では、まだ生まれていない将来世代に大きなツケが回る。

https://www.asahi.com/articles/DA3S13297256.html?ref=opinion