韓国の小学校5−6年生向け教科書で難解な用語の意味とそれが由来する漢字を欄外に記載する「漢字表記政策」が突然取りやめになっていたことが分かった。これは韓国教育部(省に相当)が当初2019年度からの導入を目指していたもの。教育部は小学校での漢字教育を拡大する方針を定め、14年から2年かけて研究を進めた上で識者の意見を参考に16年末にこの政策を発表した。

 ところが現政権発足後、何の説明もなくこの漢字表記政策が事前の説明や予告もなく突然撤回されていたのだ。教育部は前回も親たちの意見を聞かずに全国の幼稚園やオリニチプ(民間の保育所)など5万カ所を対象に、放課後の英語授業を突然禁止したことで大きな批判を受けた。このように教育部では突然の方針転換が相次いだこともあり、最近は「教育政策が政権の意向に沿って簡単に変わっている」などの批判が相次いでいる。

■2年以上準備した政策が突然取りやめに

 教育部は2014年に「2015改定教育課程」を取りまとめる際「新しい小学校教科書は漢字表記を拡大する方向で検討する」と発表していた。教科書に出てくる用語は本来漢字語に由来する言葉が多いため、児童たちが漢字を知らなければ理解が難しくなるからだ。教育部がこの方針を発表すると「漢字併記」も同時に問題になった。一部市民団体は教科書に出てくる漢字由来の言葉に漢字を併記する方針について「ハングル専用原則に反する」「私教育を拡大する」「児童の学習負担が大きくなる」などの理由で反対していた。

 その後、教育部は公聴会や政策研究などを経て、2016年12月に最終案を発表した。それによると教科書本文のハングルで書かれた漢字由来の言葉に漢字を併記することはせず、教科書の余白(左右や下部)に学習にプラスになると判断される範囲で、その言葉が由来する漢字の読み方と意味の説明を記載する方針が決まっていた。例えば科学(理科)の教科書本文に「恒星」という言葉がハングルで記載されていれば、そのページの下段にその言葉が由来する「恒」という漢字の読み方や意味を記載するというやり方だ。この方針に基づいて教育部は教科書でよく使われる300の漢字を選び、その漢字について読み方と意味を記載することにしていた。

 ところが教育部はそれから1年過ぎた先月、事前に何の説明もなしにこの方針を突然撤回した。教科書執筆者らが参考にする「教科用図書開発のための編集資料」修正版には撤回が明記され、またこの資料は教育部のホームページにアップされたが、メディアなどにはこの方針撤回を伝えなかった。前政権当時、この政策を推進した教育部のナム・ブホ教育課程政策官は「(漢字表記政策が)施行される前なので(教育現場で)何かを変更する必要もないことから公表はしなかった」「政府が300漢字の基準を提示すれば、私教育が増えるとの懸念が根強かったため、撤回に至った」などと説明した。

■「教育部の立場が180度変わった」との批判も

 しかしこのような説明は前後が全くかみ合わない。1年前に教育部が小学校教科書での漢字併記を進めていた当時、一部の進歩系教育団体やハングル団体などが「児童たちの学習の負担が大きくなり、私教育が横行する」などとして漢字併記に反対していた。すると当時の教育部は報道資料を通じ「漢字表記は一つの単元に0−3件ほどしかなく、また概念の理解を助ける場合にのみ提示するので、学習量やレベルなどの面で私教育に影響はないだろう」と説明していた。ところが今回突然方針を撤回した際には「児童の学習負担や私教育のさらなる横行が懸念されるため」と以前とは正反対の説明を行った。わずか1年で180度その言い分が変わったのだ。

 教育部が内部あるいは外部からの圧力で方針を見直したとの見方もある。実際に教育部は昨年9月、語文政策正常化推進会に送った文書の中で「小学校5−6年生で漢字を学ぶと学習効果が高く、学習に適正として定めた漢字の数(300字)は教師や父兄、学会、市民団体からさまざまな意見を聞いた上で決めた」と説明していた。全国漢字教育推進総連合会のチョン・グァンベ事務局長は「わずか4カ月前まで従来の方針がそのまま推進されるとの説明を聞いていたが、政府は何の説明もなしに突然方針を撤回した。これは完全な密室行政だ」と批判した。

チュ・フィヨン記者

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<韓国小学校教科書の漢字表記政策、政府が突然撤回>
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/01/11/2018011101094.html