国民生活や経済、金融市場に重大な影響を及ぼす仮想通貨取引所の閉鎖を韓国政府は発表からわずか7時間でひっくり返した。これでは現政権の政権運営能力に重大な疑念を抱かざるを得ない。

取引所閉鎖が発表された直後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の主な支持層である20−30代が大統領府ホームページの掲示板に殺到し「文大統領を支持したことを後悔している」などの書込みが相次いだため、大統領府はたちまち政策を見直し「まだ正式に決定したものではない」などと支持者たちに言い訳しているのだ。

300万人が1日最大6兆ウォン(約6300億円)を取引する市場に事前の予告もなく突然現れ、その入口に大きな鍵をかけると豪語した政府が、わずか数時間で何かに恐れを抱いたかのようにしっぽを下ろした。全世界が注目した政策だった。韓国政府の無能さと無責任さを世界に知らせたようなものだ。

現政権発足からすでに8カ月が過ぎたが、それまで発表された政策はどれもわずか1日でなかったことにされるか、あるいは数日単位で大きくぶれるケースがいくつもあった。

年末には教育部(省に相当)が「全国5万カ所の幼稚園やオリニチプ(民間の保育園)における放課後の英語指導を禁止する」と発表したが、これも今に至るまで未定なのか禁止なのか猶予なのかさえはっきりわからない。

教育部はこれを発表した翌日「何も決まっていない」と突然説明を変え、その後は「禁止する方向に向かう」と言い出した。これは語学スクールの高額な受講料を支払えない親たちが反発したからだが、教育部は「施行時期の先送りを含め、1月中には決めたい」とあいまいな態度をとり続けている。

大学修学能力試験(日本のセンター試験、修能)の見直しも今すぐ実行に移すかと思われたが、これもすぐにしぼんでしまった。

経済副首相が「税金を上げる考えは全くない」と公言したその2カ月後、政府は国会に増税に関する法案を提出した。児童手当の支給対象に所得上位10%が含まれるかどうかも未だに決まっていない。

テレビのニュースでTHAAD(米国の高高度防衛ミサイル)が韓国に搬入される様子が大々的に報じられたにもかかわらず、政府はこれを知らなかったとして「報告を怠った」などと大騒ぎを起こし、結局は米国と中国の双方に疑念を抱かせるサンドイッチ状態になってしまった。

韓日慰安婦合意も白紙化するのかと思われたが実際はそこまで踏み込まず、日本からは激しい反発を受け、また元慰安婦女性たちからも「だまされた」と批判されている。

戦術核兵器の再配備、北朝鮮に対する海上封鎖といった重大な安全保障政策も、国防部と大統領府の説明が食い違っている。

公正取引委員会はサムスン物産株の売却と関連して2年前に下した決定を覆し、財界を驚かせ不安に陥れた。次はどの政策がひっくり返されるのか、もはや誰にもわからない。

政府はどう考えてもおかしな政策への批判には完全に耳を閉ざし、間違いがあっても自らの非を認めない。文大統領の言葉を借りれば「まぶたも動かさない」ということだ。ところが自らの支持者たちがわずかな咳でもすれば政府は風邪を引いてしまう。今国政の最大のリスクは政府そのものになっている。


2018/01/13 09:01
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