https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180309-00000032-sasahi-kr

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、「『慰安婦』問題」について。

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 今年の「3.1独立運動記念式典」で韓国の文在寅大統領は演説の中で「慰安婦」問題に触れ、「加害者である日本が『終わった』と言うべきではない」と話した。これはお金で解決する問題ではない、永遠に考えなければいけない人権問題なのよ、というまともさが眩しかった。

 とはいえ案の定、この発言を受けた日本は荒れている。政府間の約束の意味がわかってんのか!? 終わらせるって約束しただろ?と非難する声は官房長官はじめ、ネットでも大きい。同じ調子でTPP反故にしたトランプ批判もどうぞと言いたいところだが、いったいなぜ、対韓国、こと「慰安婦」問題で日本は冷静になれないのだろう。

 その理由を私は、「慰安婦」問題に羞恥を持つ人が多いからだと考えていた。性暴力で告発されるなど(男として)恥ずかしい。早く忘れろ、声出すな、俺の名誉を守れ、という意識なのだろう、と。

 ところが、“みんなが言えない本音を俺が率先して言ってやる”みたいな人がもてはやされるようなネット社会を生きていると、そんな羞恥すらないのだと感じる。むしろ「男ならば誰でもやること。なんで俺らだけ非難されなきゃいけないの?」という本気の被害者意識が見え隠れする。だからこそ声をあげる被害者を叩き、これは人権問題だと訴える声を「金払ったのに」と嘲笑う。もはや性暴力問題など、誰の頭にもない。そんな状況なのではないか。

 平昌オリンピックのセレモニーに元「慰安婦」被害者の女性が招かれたりなど、国家行事に「慰安婦」女性たちが招待されることは、近年の韓国では珍しいことではない。それは韓国社会が彼女たちの戦いに敬意を示しているからだという。

 最近は、若者たちの間で「慰安婦」女性たちを「かっこいい」と考える傾向もある。彼女たちの人生をモチーフにしたグッズ販売の会社を若者が起業し、大成功を収めるなど(収益は人権活動や「慰安婦」運動に還元される)、「慰安婦」問題に関心を持つ若者の層が広がっているのを、韓国にいると実感する。

 と、こんな話をすると「韓国はベトナムで、日本軍と同じことしたのを知っているか?」と得意げな顔で言いたがる人もいる。得意げになっている時点で人権感覚ゼロすぎるのだが、そういう人は知っているだろうか。ベトナム戦争時の韓国軍の性暴力加害を、韓国社会で告発したのは、「慰安婦」女性たちであり、その支援者だったことを。その声によって、タブーだった加害国としてのベトナム戦争の語りが、新たに韓国社会で生まれはじめていることを。

 そう。女たちにとって「慰安婦」問題は、日韓政治問題ではなく、最初からずっと人権問題だったのだ。そしてその一歩も動かないその強さが、韓国社会、国際社会を変えてきたのだ。

 1991年、金学順さんが声をあげてから約30年。韓国と日本の差は、人権意識、という点で大きく大きく、差が開いた。


2018/03/13(火) 18:29:23.53
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