■平和条約が締結されれば米軍は不要、ただし中国の封じ込めには必要――撤退の困難さを裏付ける40年前の教訓とは

さしものドナルド・トランプ米大統領も、2月の時点で気付いたようだ。
在韓米軍を撤退させるのは口で言うほど簡単なことではないのだ、と。

米NBCニュースによれば、2月の平昌五輪前に在韓米軍の撤退を考えていたトランプを、
ジョン・ケリー大統領首席補佐官が強く説得して思いとどまらせたという。

それから急展開を見せている朝鮮半島情勢を、トランプは楽しんでいるかもしれない。
何しろ韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に、ノーベル平和賞にふさわしいとまで持ち上げられたのだから。

しかし今後の朝鮮半島情勢がどれだけ好転しようとも、韓国から米軍が撤退できるかどうかを考えると、その道のりはあまりに遠い。

4月27日に文在寅と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の間で行われた南北首脳会談は、
冗談も飛び出すほど和やかなムードに終始した。
そこで署名された「板門店宣言」では朝鮮半島の完全な非核化と朝鮮戦争の正式な終結を目指す方針が示された。

だが、こんな話は前にも耳にしているから、額面どおりには受け取れない。全てがうまく運んでも、朝鮮戦争を公式に終結させる平和協定への道筋をつけることは難しそうだ。

そこではもちろん、在韓米軍をどうするのかが大きなテーマになる。

これまで北朝鮮は、朝鮮半島からの米軍撤退を和平実現の条件にしてきた。
この点に対する北朝鮮の態度は、確かに軟化してきている。
板門店宣言にも在韓米軍への直接の言及はなかったし、金正恩は在韓米軍の撤退にこだわらないだろうと文在寅は語っていた。

だがトランプ政権は、いずれ二者択一を迫られるだろう。
在韓米軍を完全に撤退させるのか、それとも駐留を続けるために軍の地位を大幅に変更する道を探るのか。

関連ソース画像
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ニューズウィーク日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10143.php

続く)