【メディア批評】ノ・ドルヤンの世界展望台

イ・イルハ監督の『カウントス(カウンターズ/2017)』は、嫌韓デモを阻止するために結成した『オトコグミ(男組)』のリーダー、タカハシ(高橋)を中心に、日本の右翼が率いる嫌韓運動の様相と、これを防ごうとする人々(カウンターズ)の活躍をカメラに収めたドキュメンタリー映画である。

在日韓国人に対するヘイトスピーチ(嫌悪発言)に対し、男組は嫌韓デモを阻止する為に暴力も辞さない。嫌韓デモの主導者にパンチを放ち、高橋を含む組員数人は拘束された事もある。さらに驚くべき事実は、在日韓国人に対する差別と嫌悪を防ぐ為に男組を作った高橋が、右翼志向の元ヤクジャ(ヤクザ)なのである。

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▲ 映画『カウンターズ』

自らを『正義のために先頭に立つ行動主義者』と規定する男組の組員は、嫌悪主義者に対する暴力を正当であると考えている。嫌韓デモに立ち向かう大多数のカウンターズが男組の行動を支持している訳ではない。それでも男組の活動は嫌韓デモの防止に意味のある成果を収め、さらに日本全域に差別禁止運動が広まるきっかけの役割を果たしている。

以前から日本の社会で、在日韓国人に対する差別と蔑視は公然と存在した。しかし2010年代にネトウヨ(ネット右翼)を中心に嫌韓が急速に広まると、深刻な危機意識を感じた物が一人、二人と集まって嫌韓デモを防ぐカウンターズを組織したが、驚異的な勢力を誇るネトウヨ勢力を防ぐには力不足だった。しかし、嫌悪主義者を阻止するためには暴力も躊躇しないちょー圧力組織の男組が現れ、嫌韓デモを阻止する運動が勢いに乗る。

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▲ 映画『カウンターズ』

在特会を創設した桜井は、差別のない世界は存在しないと断定する。我々が住む世界はあらゆる差別と嫌悪で点綴されていて、特定集団に向かった嫌悪は差別と抑圧を助長する勢力を結集させて、存在感を誇示する事に貢献する。

在日韓国人に対する嫌悪デモを率いる主導者とのインタビューと、取材を通じて日本の嫌韓事態に対処する『カウンターズ』は、在日韓国人に対する日本の右翼の嫌悪と差別は単に彼らだけの問題で、日本のみで起きる現象ではない事を再確認させてくれる。社会的弱者や特定集団に対する嫌悪と差別は嫌悪を助長する勢力だけでなく、強まる差別に耐えれば耐えるほど人々を強くする。

『カウンターズ』は、我々の中に存在する嫌悪と差別に対する問題意識を提起すると共に、これを防ぐための積極的な行動の必要性を強調する興味深い映画である。

ソース:Madiaus(韓国語)
http://www.mediaus.co.kr/news/articleView.html?idxno=124098