【ソウル=名村隆寛】朝鮮戦争勃発から25日で68年となる。朝鮮戦争は北朝鮮の攻撃で始まったが、北朝鮮は自らの「南侵」を認めず、米韓の「謀略戦争」だと主張し続けている。最近の北朝鮮による対話攻勢の下、韓国では北朝鮮の戦争責任を問う声や米韓合同軍事演習中止への不安感が一層かき消され、北が望む方向に向かっている。

 北朝鮮がこれまで一貫して求めてきたのが、1953年に国連軍(米国が代表)と中朝各軍が締結した休戦協定の平和協定への転換だ。北朝鮮にとり、平和協定締結は在韓米軍の撤退を意味してきた。「朝鮮半島に平和が訪れれば米軍が駐留し続ける意味はない」という言い分で、金日成(キム・イルソン)政権時代からの念願だ。

 北朝鮮の主張が変わっていないにもかかわらず、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は4月の南北首脳会談で、金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長と「休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催推進」で合意した。

 終戦宣言は平和協定の締結とは違い、あくまでも“象徴的”な意味合いを持つもので、それには拘束されない。12日の米朝首脳会談で終戦宣言はなかったが、韓国では今も「平和の象徴」への期待は高い。

 一方で韓国を驚かせたのが、米朝首脳会談の直後にトランプ米大統領が口にした、米韓合同軍事演習の中止や将来的な在韓米軍の縮小、撤収の可能性だった。結局、米韓は8月に予定されていた合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」の中止を発表。新たに2つの米韓演習の無期限の中止も発表された。

 韓国政府は「北朝鮮が非核化を実行する姿を見せ、対話が維持されるならば」(大統領府)、「相応の措置を期待している」(国防省)とし、非核化に向けた北朝鮮の反応を見守る構えだ。ただし、あくまでも「暫定的な中止」(同)で、北朝鮮の対応次第では演習再開の可能性はある。

 韓国では米韓演習の中止に対し保守派は反発している。今回、演習の新たな無期限中止が決まったことで、在韓米軍の縮小にまで進むことへの懸念も増幅している。しかし、韓国社会では懸念よりも、金正恩政権の軟化や南北関係改善への期待感の方が勝っており、不安や緊張感はさらに感じられなくなっている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180624-00000003-san-kr