2018/7/6付  
(Deep Insight)中ロの枢軸に急所あり
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3266166005072018TCR000/
 ユーラシア大陸の真ん中に位置し、中ロが国境を接する要塞、中央アジア。かつて旧ソ連に属し、いまはカザフスタンや
ウズベキスタンなど5カ国からなる。この地域の国々や米欧の政治家、有識者らが集まり、協力を話し合う会議が6月22〜23日、
アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた。
 そこで感じたのは急激に台頭する中国に、ロシアの生存本能が脅かされている実態だ。会議の合間に、中央アジアの参加者から
こんな秘話を聞いた。
 ロシア当局は最近、影響下にある中央アジアのロシア語の放送局やネットメディアを使い、中国脅威論をあおる情報工作をひそかに
強めている。インフラ投資に乗じ、中国人が押し寄せる。中国が土地を奪いに来る……。こんな情報を拡散しているというのだ。…

 プーチン大統領は不安はあるものの、今のところ「一帯一路」への支持を表明している。…
 しかし、早晩、そうは言っていられない状況になるだろう。中国が1月、オホーツク海から北極海を抜け、欧州に伸びる
「氷上のシルクロード」構想を正式に決めたからだ。
 オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、決して他国には触れられたくない聖域だ。国防の命綱ともいえる戦略核ミサイル搭載の
原子力潜水艦が、この海には配備されている。北極海も大切なロシアの軍事拠点になりつつある。
 中ロの協調を優先し、プーチン政権は表向き、北極開発でも連携する意向を示してはいる。しかし、内部に通じた外交筋は
「氷上シルクロード構想をきっかけに、ロシア軍内で『一帯一路』への脅威感が高まっている」という。
 そんな空気を映してのことか、今年に入り、きな臭いできごとも起きている。同筋によると、ロシア軍は今春、通常戦力だけでなく、
戦術核の使用も想定した演習を中ロ国境で実施したという。中国へのあからさまな警告だ。…