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▲全国戦没者追悼式で式辞を述べる安倍首相=15日、東京・日本武道館で

 安倍晋三首相は十五日の全国戦没者追悼式での式辞で、先の大戦でのアジア諸国への加害責任に触れず、反省や謝罪の言葉もなかった。第二次政権発足後、六年続けて「加害と反省」を盛り込まなかった。「国の未来を切り開く」との表現は六年連続で使用。過去に区切りを付けて未来を志向する傾向が際立っている。

 首相は「戦後、わが国は平和を重んじる国として、ただ、ひたすらに歩んできた。戦争の惨禍を、二度と繰り返さない。歴史と謙虚に向き合う」と述べた。在位最後の追悼式となる天皇陛下は、お言葉で「深い反省」に言及した。戦後七十年の二〇一五年以降、四年続けて「深い反省」の表現を使っている。

 全国戦没者追悼式の首相式辞を振り返ると、一九九四年、当時の村山富市首相が日本の加害責任に言及し、反省の言葉を語った。その後、一二年十二月に第二次安倍政権が発足するまで、歴代首相は式辞で加害と反省に触れた。安倍首相も第一次政権時の〇七年には「多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」と認め、「深い反省」の意を示した。

 首相が第二次政権発足後、「加害と反省」の表現を使わず、未来志向を強調する背景には、次世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせない」(一五年の戦後七十年談話)との思いがあるとみられる。今年五月に日中韓首脳会談が約二年半ぶりに日本で開催され、十月にも首相が訪中する方向で調整が行われるなど、東アジア諸国との関係が改善傾向にあるが、首相は式辞で従来のスタイルを踏襲した。

 与党・公明党の山口那津男代表は十五日、東京都内での街頭演説で、先の大戦に関し「多大な損害をもたらしたわが国の行為に対し、心からの反省とおわびの気持ちを込めて、平和の尊さをかみしめなければならない」と訴えた。 (小椋由紀子、山口哲人)

ソース:東京新聞<首相「加害と反省」触れず 戦没者追悼式で6年連続>
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201808/CK2018081602000160.html