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 中国で開かれた「北朝鮮貿易博覧会」を訪れたことがある。博覧会とはいうが、北朝鮮の山菜、たばこ、薬草などを売る田舎の市場さながらだった。大部分の商品が10元(約164円)だったが、1万元という値札が多いコーナーがあった。平壌の万寿台創作社が製作した絵画、工芸品を売る場所だった。北朝鮮の案内員が「首領様、将軍様の肖像画や銅像を製作する作家らが手掛けた作品だ」と熱心に説明した。

 北朝鮮はこうした宣伝を通じ、アフリカの独裁者のためにも造形物を作り、ドルを稼いだ。先ごろ国連と米国は万寿台創作社を核開発の資金源として名指しし、制裁リストに掲載した。平壌を訪れた文在寅(ムン・ジェイン)大統領がここを訪問したことについて、青瓦台は「芸術品を観覧する目的だった」と説明した。

 大統領の特別随行員らは平壌の科学技術殿堂を訪れたという。そこは2016年に北朝鮮が4回目の核実験を実施した直後に設置されたもので、建物の形状が原子の構造を模している。外形を見ただけで、北朝鮮が核・ミサイルの成果を誇るために建てたことが分かる。そこで韓国側随行員は何を感じたのだろうか。

 CNNテレビの記者が今月9日、北朝鮮の建国70周年のマスゲーム「輝く祖国」を観覧した後、「学生10万人が動員され、毎日8時間ずつ数カ月にわたり準備した」と伝えた。そこに登場する住民を「ヒューマンピクセル」と呼んだ。ピクセルは画素という意味だ。

 北朝鮮が得意とするマスゲームを見ると、動員された幼い学生たちはピクセルではなく奴隷のようだ。今年の夏、平壌も猛暑だったが、彼らが流した汗と涙はどれほどだったろうか。過去にはマスゲーム「アリラン」の練習時にトイレに行くことができず、膀胱炎にかかったり、熱中症で倒れたりする学生が続出した。北朝鮮は公演のチケットを最高100万ウォン(約10万円)で販売している。文大統領は昨夜、このマスゲームを観覧し、演説も行った。

 文大統領はきょう(20日)、金正恩(キム・ジョンウン)と共に白頭山に向かうという。韓国人にとって白頭山は「民族の霊山」だが、北朝鮮では「金日成一家の革命の霊山」だ。金正日(キム・ジョンイル)が生まれたという白頭山の丸太小屋を「革命の聖地」に仕立て上げ、住民が巡礼する。実際には金正日の出生地はロシア極東のハバロフスクというのが定説だ。

 北朝鮮の核廃棄には依然進展がないにもかかわらず、我々は制裁対象の機関を訪れ、原子構造を模した殿堂に立ち寄り、体制宣伝公演に拍手をした。真の平和への道は気まずいが冷徹な理性に包まれ、偽の平和への道は華麗なイベントと美辞麗句に包まれていることが多いものだ。

アン・ヨンヒョン論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版【萬物相】万寿台創作社と「輝く祖国」
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