受賞者の発表が迫ると韓国ネットユーザーの間で再び賛否の舌戦がヒートアップしている。こうなれば、平和賞が韓半島の平和を促進するどころか国内葛藤を激化させるのではないかと心配になるほどだ。事実、平和賞受賞は良いことだが、平和賞が平和を保障するわけではない。たとえば、イスラエルとパレスチナ指導者3人がオスロ平和協定締結に寄与した功労で1994年平和賞を共同受賞したが、中東の平和は今も遠いままだ。金大中元大統領のノーベル賞受賞からわずか2年後、第2次北核危機が高まり北朝鮮の核開発はさらに速まった。

分断と戦争の傷が癒えないまま65年間停戦状態の韓半島を考えると、現在としてはノーベル賞よりも平和のほうが切実だ。ノーベル平和賞は政治だが、非核化は現実だ。外信が受賞候補群に挙げた文大統領は平和賞に対して淡々とした態度をすでに表明している。板門店会談直後、故金大中(キム・デジュン)大統領の李姫鎬(イ・ヒホ)夫人が「大きなことを成し遂げた。ノーベル平和賞を受けなさい」と祝電を送ると、文大統領は「ノーベル賞はトランプ大統領が受賞し、我々は平和だけをもたらすことができればいい」と述べたという。

今年だけで3回の南北首脳会談を行い、6月には史上初の米朝首脳会談も開かれた。だが、実質的な平和を保障してくれる真の非核化について壮語するのはまだ早い。賛否両論の多い合意文と宣言文が発表されたが、非核化という本質的変化はまだ手がつけられていない。第2回米朝首脳会談と11月米議会中間選挙という重大な峠を越さなくてはならない。今は平和賞をめぐって皮算用しながら興奮する時ではなく、冷静に徹底して非核化戦略を立てていかなければならない時点だ。もちろん、「中途半端なノーベル賞」でも拒む理由はないが、非核化を実質的に終わらせた後、「真の平和賞」を堂々と受賞すすほうがずっといい。

チャン・セジョン/論説委員