http://www.chosunonline.com/site/data/img_dir/2018/10/29/2018102902053_0.jpg
http://www.pennmike.com/news/photo/201809/10274_11698_3054.jpg
▲実際の写真(別ソース:ペンアンドマイク)

 この1カ月間、ソウル市庁の外壁には、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の写真入りの超大型垂れ幕が掛けられていた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩委員長が白頭山で手をつないで一緒に持ち上げ、明るく笑っている場面の写真だ。

 垂れ幕には「韓半島(朝鮮半島)の運命を変えた南北首脳会談、ソウル市も一緒です」という文言が記されていた。その前は二人が板門店で対面し、握手する写真の垂れ幕を半月にわたって掛けていた。

 最近、ソウル市内には「歓迎 金正恩委員長殿」という正体不明のプラカードが出現し、光化門の交差点で人共旗(北朝鮮の国旗)を振る一人デモもあった。こういう状況なのだから、韓国の首都庁舎に北朝鮮の金正恩委員長の写真が掲げられるのも大したことではないのだろう。ところで、当の金正恩委員長とはどういう人物なのだろうか。

 米国の人権団体「人権財団(HRF)」でチーフ・ストラテジー・オフィサーを務めるアレックス・グラッドスタイン氏は、最近韓国を訪れた際、「ソウル市民の税金で独裁者の写真をソウル市庁に掲げているのを見て驚いた」と語った。彼はずばり「独裁者」と呼んだが、金正恩委員長は単に「独裁者」としか呼べないのだろうか。

 世間に独裁者は多いが、人を対空機関銃でばらばらにして殺し、遺体を焼いてなくしてしまう独裁者は、そうそういるものではない。異母兄を外国の空港で、最悪の化学兵器を使って暗殺できる独裁者もそう多くはない。そんな独裁者がソウルのど真ん中で、にこやかに笑っている。

 グラッドスタイン氏は「外国人にとってソウル市庁の金正恩委員長の写真は、韓国政府は北朝鮮の人権に無関心だというメッセージとして映りかねない」と語った。韓国政府は、北朝鮮住民の人権に無関心どころか、金正恩政権の人権じゅうりんをほう助している。

 文大統領は「平壌の驚くべき発展性を見た」と語り、与党議員は「平壌は香港・シンガポールと区別がつかないほど」と発言した。それほど発展して香港・シンガポール並みの水準なら、なぜ韓国が数十兆、数百兆ウォン(1兆ウォン=約981億円)もの支援をしなければならないのか。

 与党の有力議員は「北朝鮮は耐性が付き、制裁は無駄」と語った。ならば大統領はなぜ、北朝鮮制裁を緩和してほしいと欧州にまで出掛けて頼んだのか。韓国国内では有名な北朝鮮専門家の一人は、今年の北朝鮮の経済成長率をマイナス5%と推定した。北朝鮮制裁の効果だろう。

 グラッドスタイン氏は「文大統領は両親が北朝鮮生まれで、人権弁護士として活動してきたにもかかわらず、北朝鮮の人権問題に疎いのは理解できない悲しいこと」と語った。

 韓国の学生運動の歴史を知らない人には理解し難いのだろう。韓国の人権弁護士は、北朝鮮住民にとって人権弾圧弁護士も同然だ。ソウル市庁に掛けられていた金正恩委員長の写真は10月25日に降ろされた。しかし、それを上回る写真がまた掲げられるだろう。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版【萬物相】ソウル市庁舎に掲げられた金正恩氏の写真
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/10/29/2018102902066.html