韓国大法院(最高裁判所)の「日本帝国主義時代の強制徴用判決」を受けて荒波渦巻く韓日関係に「外交上の悪材料」が相次いでいる。韓国政府は11月中に、2015年の韓日慰安婦合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の事実上の解散を発表することが10月31日、分かった。

日本の報道機関は、韓国政府が10月25日にこうした方針を安倍政権に通知したと報じた。また、三・一運動(日本による植民地支配下で起こった独立運動)と臨時政府樹立100周年を来年迎えるにあたり、韓国政府が日本を含む世界50カ国以上の在外公館で大々的な記念式典を推進していることも分かった。

外交関係者の間では、「李明博(イ・ミョンバク)大統領=当時=が独島(日本名:竹島)に上陸した2012年よりも韓日関係は悪い。最悪だ」という言葉が出ている。年内の文在寅(ムン・ジェイン)大統領訪日や安倍晋三首相の訪韓も駄目になったという見方が支配的だ。

■大法院判決後、初めて康京和長官と河野外相が電話協議

韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官は31日、日本の河野太郎外相と電話で協議し、「韓国政府は司法判断を尊重し、関連事項を総合的に検討して対応策を立てていく」と述べた。

河野外相は「両国関係の一番の法的基盤(韓日請求権協定)が非常に根本から損なわれた。その点を日本は重く見ている」と述べ、韓国政府の対応措置を要求した。何の接点もない儀礼的な対話ばかりが行き来したわけだ。

このような状況で、同日付の朝日新聞は「韓国外交部の趙顕(チョヒョン)・第1次官が25日、秋葉剛男・外務次官と東京都内で会談した際、日韓慰安婦合意に基づき設立した支援財団『和解・癒やし財団』を解散する考えを伝えた」と報道した。

韓国政府は、同財団の処理を11月中に終わらせ、日本政府の拠出金10億円を、韓国の予算で全額立て替える考えだ。しかし、日本側はこれまで「財団解散は事実上の慰安婦合意破棄だ」として反発してきた。

外交部が財団解散を発表すれば、最悪の方向へ突き進む韓日関係の「火種」がまた1つ増えることになる。外交消息筋は「強制徴用判決と和解・癒やし財団の処理は結果がある程度予想されていた。日本は韓国政府の姿勢を見守った上で、より強く出てくるかもしれない」と予想している。

■来年の三・一節、日本などで大々的に記念式典

外交部は、来年の「三・一運動と臨時政府樹立100周年記念行事」の予算39億ウォン(約3億9000万円)のうち、14億ウォン(約1億4000万円)を「在外公館祝日行事開催支援」名目で組んだ。需要調査を経て、世界50カ所以上の在外公館で記念行事を推進するという。この中には東京都内の駐日韓国大使館も含まれている。

韓国政府は、対日関係において歴史問題とそのほかの経済・安全保障懸案は切り離して対応するという「ツートラック戦略」を表明してきた。だが、外交専門家らは「現状では、日本はその境界線が崩れたと判断する公算が高い」と話す。

韓日首脳間のシャトル外交再開が不透明な状況であるため、来年6月に大阪で開催される20か国・地域首脳会合(G20サミット)まで現在の局面が続くかもしれないという見方もある。

「今の外交部の人員構造では現状に対処しきれない」という懸念も少なくない。外交部内の日本専門家グループ「ジャパン・スクール」は朴槿恵(パク・クネ)政権時の韓日慰安婦合意や強制徴用裁判関連意見書提出などで打撃を受けている状況だ。

強制徴用意見書に関連して、外交部北東アジア局は今年8月、検察の家宅捜索まで受けている。ジャパン・スクール出身のある外交官は「外交部内には『韓日の懸案に足を突っ込んでもいいことはない』というムードが広がっている」と語った。

また一部には、韓日関係の危機が韓米関係や北朝鮮との非核化交渉にも影響を与える可能性があるとの見方もある。申ガク秀(シン・ガクス)元駐日韓国大使は「北朝鮮の非核化過程で米国が自国の利益ばかり考えた場合、韓日は北朝鮮に対して共同戦線を張るべきだが、そこで問題が生じる可能性もある」と言った。

米紙ニューヨーク・タイムズは30日、「米国の官僚たちは、今回の判決で韓日関係がもっと悪くなるのではと懸念している」「アジアの2つの同盟国のうち、どちらか一方だけの肩を持つことができない米国は、北朝鮮の非核化交渉で韓米日の3カ国協力が稼働できなくなるのではと考え、いらだつことだろう」と書いた。

2018/11/01 11:02/朝鮮日報日本語版
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