米陸軍が、弾道ミサイル防衛部隊の新司令部を相模総合補給廠(しょう)=相模原市中央区=に発足させた。中国や北朝鮮のミサイルの脅威への対応とみられ、グアムの高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)も指揮下に置く方針も示した。場所はJR相模原駅のすぐ北側。地元からは疑問や反発の声も上がる。

 発足したのは第38防空砲兵旅団司令部。地対空誘導弾PAC3を配備する嘉手納基地(沖縄県)の大隊や、移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を運用する車力通信所(青森県)など国内三つの防空砲兵部隊を指揮統制する。いずれもハワイの司令部に属していた部隊だ。10月16日から駐留を始め、半年から1年かけて約115人を配置する。

 31日、米陸軍キャンプ座間(神奈川県座間市など)で編成式典があり、在日米陸軍のビエット・ルオン司令官は「38旅団は米軍と自衛隊の即応力向上だけでなく、日本国内の砲兵部隊の防空能力を高める」と説明した。グアムのTHAADを指揮下に置くことにも言及。米海軍のイージス艦の迎撃ミサイル「SM3」とも連携するとみられる。

 神奈川県や相模原市は9月末に新司令部について政府から通告を受け、任務や運用の詳しい説明を求めた。同市は10月、「事前相談もなく突然知ることになり遺憾。兵站(へいたん)を担う補給廠への駐留には疑問をぬぐえない」などとして、補給廠の機能強化や恒久化につながらないよう防衛、外務両相に要請。地元では市民団体が駐留撤回を求めて抗議行動を続けている。(吉村成夫)

進む日米一体化

 国内に米陸軍のミサイル防衛(MD)司令部ができることで、MDでの日米一体化はさらに進みそうだ。

 今の自衛隊のMDは主に北朝鮮の弾道ミサイルから日本を守る想定で、日本海のイージス艦と陸上から発射する二段構え。さらに陸上での「イージス・アショア」配備でMDを強化しようとしており、この迎撃に在日米陸軍のレーダー情報は欠かせないものとなる。

 情報共有の速さは米陸軍のハワイの司令部経由でやり取りしていた時と比べてそう変わらないが、MDに詳しい政策研究大学院大学の道下徳成教授は「有事の瞬時の迎撃判断に備える平時からの日米協議が、より緊密になるという利点があるのではないか」と語る。

 新司令部の傘下にはグアムのTHAADも入る。防衛省幹部は「北朝鮮や中国から日本の方へミサイルが撃たれれば、飛距離によって日本防衛から米国防衛へと切り替わる。新司令部が、そのつなぎ目になるのは自然なことだ」と話す。(藤田直央)

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朝日新聞デジタル 2018年10月31日21時25分